21-3
複雑そうな顔をしてるつもりは無かったのだけど…
「なんか嬉しくて。元の世界では全部自分でしなきゃって思ってたから…でもここではそうじゃないんだなって。みんなに助けて貰えることって幸せなことなんだなって…」
その感覚に慣れてないだけ
それが複雑な表情になるとは思わなかったけど
「それを始めたのはお前だよ」
ロキの手が私の髪をなで離れていく
「そうだな。俺を引き留めてくれたのはオリビエだ」
「俺達をここにと言ってくれたのもオリビエだよ」
ジョンの言葉にマロニエが続けた
「お前自身にそのつもりがなくてもここに人を集めたのはお前だ。助けてるんじゃなく助け合ってるんだってことだけは覚えとけ」
「助け合ってる…」
呟くようにロキの言葉を繰り返す
すごく暖かい言葉に感じるから不思議だ
「持ちつ持たれつですね。そういう意味でもここは居心地のいい場所だ」
マロニエは言いながらうんうんと頷いている
「ふふ…みんながそう言ってくれるならそう思うことにする。これからもよろしくね」
「「「こちらこそ」」」
その頷きにみんなで笑い出す
「ところでカフェはいつオープンの予定だ?知り合いが楽しみにしてる」
「本当に?改装も魔道具の搬入も終わったから来週くらいには始めようと思ってるんだけど…」
「じゃぁそう伝えとくよ。顔の広い奴だからいい宣伝になるだろ」
「それは助かるわ。正直どうやって広めようか迷ってたの」
こっちの世界の宣伝方法など分かるはずもなく、その効果も未知数だけに口コミは何より頼もしい
「ダビアにも言っとけ」
「何でダビア?」
「あれでも女に人気がある。勝手にギルドや花街で広げて来るだろ」
「ギルドは分かるけど、花街…出入りしてるのね」
突然飛び出したワードにちょっと思うところがある
花街は娼館の集まった場所のことだ
働いてるのは未亡人で生活が立ち行かなくなった人や、盗賊たちの被害にあった人が大半らしい
「あれが女断ちなんて到底無理だ。俺がいなけりゃ一番に狙われるのはオリビエだろうけど」
「確かに。オリビエはダビアのドストライクですからね」
マロニエの言葉に顔が引きつる
最初ダビアとロキをさん付けで呼んでいたマロニエは、いつの間にか呼び捨てするようになっていた
「安心して大丈夫ですよ。ダビアはクロキュスに勝てたためしがないですから。それにここでの暮らしが気に入ってるようなのでそれを捨てるようなことはしません」
「断言?」
「はい。ダビアは女好きだけどそれ以上に美味しいものに目がない。カフェがあったとしても、ここの食事つきの生活を手放すという選択肢は無いはず」
「だろうな。あいつほど単純な男も珍しい」
ロキがため息交じりに言う
「それにたとえ俺が出かけてても、お前に手出しさせるような真似はしない。相手がだれであってもな」
その言葉にドキッとする
普段はあまりそういう言葉を言わないだけに余計かもしれない
「…頼りにしてマス」
「何で片言なんだよ?」
「何となく?」
私たちのやり取りを見て、ジョンが微笑ましそうに見てるのは気のせいだと思いたい
この後、細かいインテリアや小物類の準備を進めていくことになった
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