21-2

「メニューに載せるとそれなりに数を用意する必要があるだろ?」

「まぁそうですね。メニューに載ってるのに品切れですって言われれば、正直いい気はしません」

よっぽど人気があるものならともかく、そうでなければそれが普通の反応だよね


「だろ?でもショーケースに並べてるものが全てってことになれば、たとえその商品が1つでも問題ないってことだ。極端に言えば俺らの夕食で出したのが残ればそれを回すことも出来るってこと」

「なるほど…俺らがいて夕食で残るとは思えませんけど、それなら作る方も気分的に楽ですね」

「ロキのたとえは極端すぎるけどね…」

流石に残り物とか提供しないし

どちらかと言えばカフェ用も含めて多めに作ると思う


「私としては在庫っていう点よりも、材料やデコレーションに制限がなくなるって意味合いの方が大きいかな」

「というと?」

「沢山材料を入手したけどメニューに載せるほどはない…とか?」

「あぁ、それは有り得るか。1日限定分しかないとか普通に出てきそうだし」

迷宮で材料調達するとそれは大いにあり得ることだ


「あとはメニューに載せるといつも同じデコレーションが必要だけど、ちょっとずつ変えることも出来るとかかな」

「ケーキの上にイチゴを乗せるかサクランボを乗せるかみたいな感じか?」

「そんな感じ。単に私が同じの沢山作るよりも、色んなのを作りたいってだけなんだけどね」

「そのおかげで俺らは色々食えるってことだな」

ロキがニヤリと笑う


「でも気に入ったのはまた食べたいって思いますよね?俺は気に入ったらひたすら同じの注文するタイプなんで」

「あぁ…それは…そうよね」

そういう人もかなりの割合でいる

3人しばらく黙ったまま考え込んでしまう


「何だ3人して黙り込んでどうした?」

「ジョン!お疲れ様」

私はジョンに席を用意する


「で、どうした?」

アイスコーヒーで喉を潤したジョンに再び尋ねられ、今までの経緯を説明する


「メインを3種類から選択するとはなかなか面白いことを考えるな。スイーツをメニューに載せないのも俺は賛成だ」

「問題は最後の部分。気に入ったのがあった場合…なのよね」

「そんなの簡単だろ?」

「「「え?」」」

3人そろってジョンを見る


「注文として受け付けりゃいい。2日前までにとか条件つけりゃ材料の問題もなかろう?希望の数が少なくても残りはショーケースに入れりゃいいだけの事だしな」

「そっか。それならお客さんの好みのスイーツも確実に用意できるってことね。ありがとうジョン!」

「ははは…庭師の仕事は基本的には注文ありきだからな。役に立てたならよかった」

ジョンは嬉しそうに笑った


「どうした?」

「え?」

「複雑そうな顔してる」

笑うジョンと対照的に、ロキが心配そうに見ていた

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