閑話4-4

「指導は9時から13時が一般常識、昼食を挟んで14時から18時が健康管理、夕食を挟んで19時半から23時半が礼儀作法でスケジュールを組むようオナグル様から指示されております」

「そんなに?」

勉強漬けじゃない…


「通常なら朝から夕方にかけて、それぞれ2時間ずつでこなされていましたとお伝えしましたが、ソラセナ様は他の方より倍の時間は要するとおっしゃって…」

少し遠慮がちに言われるも返す言葉もない


今日から始めるという言葉通りその直後から指導が始まった

「そんなこともご存じないとは学園から提出された成績は一体…?」

すべての教師から言われ大きなショックを受けた


「こんなことは子供でも知っていることですよ」

「ゴールドの令嬢がまさかこのような…父君はご存じなかったのかしら…」

「あまりにも酷すぎます。学園で一体何を学ばれていたのです?」

「そもそもこの程度の事が出来ないのに学園に入れたこと自体が…」


繰り返される、私を全否定するような言葉

私はこの時になって初めて後悔した

オーティ家で家庭教師を次々と辞めさせ、お父様に匙を投げさせたことを

叱ってくれた学園の先生をお父様に首にしてもらったことを


これまでにきちんと学んでいれば、幼い頃から憧れていたオナグル様に、あんな冷めた目で見られることは無かったはずなのにと


でも基礎さえできていないと言い放たれた私が挽回するのは簡単なことじゃない

教師達は婚姻の場で必要な知識だけをひとまず詰め込むと決めた

それですら私は満足に出来ないのだけど…


最後の教師が部屋を出て行くと自然と涙が溢れてきた


「何で私がこんな思いしなきゃいけないのよ…私はお父様に言われただけなのよ?オナグル様が正妃にと望まれているから行きなさいって…なのに真逆だったなんて…」

お父様を初めて心の底から憎んだ


誰かにそばにいてほしくてメイドをつかまえる

「オナグル様はどちらに?」

「オナグル様ですか?この時間ですと執務も終えられていますので…」

「何よ?はっきり言いなさいよ」

口ごもるメイドを怒鳴りつける

本当に使えない


「…歌姫の離宮におられるかと存じます」

そう言って頭を下げるとメイドは去っていった


「歌姫の離宮…?」

どういうこと?

囲うとは聞いたけど離宮を与えるなんて聞いてない

しかも執務を終えたのに私には一言もなかったじゃない!

そう思うと怒りが溢れてきた


「ちょっと!オナグル様を呼んできて!」

「申し訳ありません。それは出来かねます」

「何でよ?」

「離宮へはオナグル様の側近の中でも1名しか立ち寄ることが許されておりません」

「は?」

「王族としての緊急時以外は離宮から出てこられませんので…」

言いづらそうにしながらもそう説明した


「何よ…それ…」

私は足元から崩れ落ちた


あふれる涙を止めることも出来ず、側付きの者に部屋に連れ戻される間も「許さない」と喚き続けた

それを発端にして王宮内に醜態をさらす羽目になっても、オナグル様がプライベートで私の前に現れることは無かった

幻滅したというオナグル様の言葉が私の頭の中で何度も繰り返されていた

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