20-4

「あ、すみません。まだ名乗ってもいませんでした」

「マロニエ・コマン、守護のスキルを持ってたな」

「俺の名前…」

自分が名乗るよりも先にロキに言われ、マロニエが驚いていた


「オナグルの護衛の候補に挙がってた。守護のスキルなど護衛として目を付けられないはずがない」

「でもならなかったよな?」

ダビアがそんなことあり得るのかと首を傾げる


「…オナグルが自分より長身の護衛を嫌がったからだ」

「「「…」」」

何と下らない理由だと3人ともが黙り込む


「…あ、そうだ、お2人ならコレ知ってるかしら?」

微妙な空気に耐えられず話題を変えようとボールを取り出した


「これ…」

マロニエは首を横に振った

でもダビアはじっとボールを睨みつけるように見ていた


「この近くの迷宮32階の戦利品だろ?」

「すごい!その通りよ」

「お前よくわかったな…」

「まぁな。最低でも1つ50万シア。状態と大きさによってはもっと高値が付くレアドロップだ」

その言葉にロキと顔を見合わせため息をつく


「これがどうかしたのか?」

「ちょっとね…ねぇ、お二人の今後のことは決まってるのかしら?」

「まだだな。当分宿暮らしで冒険者でもしながら住む場所でも探そうとは思ってるが…」

「俺もです。家に戻ることは出来ませんし…とりあえず住む場所さえ確保できれば後は何とでもなりますからね」

その言葉に心の中でニヤリと笑う

そんな私を見てロキは呆れたような顔をした


「お二人ともここに住みませんか?」

「「は?」」

「ここは見ての通り部屋が沢山あるのに、住んでるのは私たちと庭師の親子、清掃婦の親子だけなんですよ」

「つまり?」

「部屋がいっぱい余ってます。あと食事も付けますよ」

「…家賃は?」

マロニエが食いついてくる


「家賃はいりません。もともとここはいただいた建物ですから」

「はい?」

「聞いてません?私、歌姫の召喚に巻き込まれた被害者らしいんです。ここはその賠償みたいなものかな?」

「まぁそうなるな」

ロキに尋ねると肯定された


「…あんたへの見返りは?クロキュスがいれば護衛なんて必要ないだろうし…」

「私というよりは子供達…でしょうか」

「子ども達?」

「ここには3歳~10歳の4人の子供がいます。実はその子供たちにそのボールをおもちゃとしてあげちゃったんですよね」

私が苦笑しながら言うと2人は口を開けたままポカンとしている


「しかも随分気に入ってしまったようで…今さら返せとも言えない状況です」

「つまり…?」

「2人で交代で子供たちを見てやっていただけるなら家賃はいりません。誘拐されでもしたら子供たちの心が傷付きますし…」

「守護持ちを贅沢な…」

ロキが笑いながら言う


「でもそれだけで置いてもらえるなら助かりますよね?俺、子供は好きですし」

マロニエがダビアに向かって言う


「それはそうなんだが…」

「ちなみにロキからも家賃は貰ってませんよ?もし子供たちを見るだけじゃ足りなければジョンの…庭師の力仕事を手伝ってもらうのも助かります。それにこれからカフェを開こうと思ってるのでそちらの手伝いでも大歓迎です」

しれっとただ働きの従業員を募る手はずを整える

そのことに気付いているのはおそらくロキだけだろう

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