閑話3-2

あれは宣言による契約といわれるものなのかしら?

忠誠を誓うために行われると本で読んだことがあるの

歌姫が愛を告げた瞬間オナグル様の手から魔法陣が浮かび上がった

それは一瞬で歌姫の中に吸い込まれていく


「きれい…」

初めて目の当たりにした契約に関する魔法陣の効果につい見とれてしまったのは内緒

だってきれいなのはその魔法陣の効果だけで、それ以外はただのはしたない行為でしかないもの


それにしても歌姫は他人の前で抱かれることに抵抗はないのかしら?

…と周りを見回すとドアの側に控えている騎士と目が合った


ウンザリしたような表情でため息をついた騎士に苦笑を返す

よく見ると側に控えている側近も止めることも出来ず居心地が悪そうだ


こんな思いするのが自分だけでなくてよかったと思う反面、これがこの国を継ぐ男なのかと妙な不安を感じてしまった

そんなこと誰にも言えないけど…


なんとかキリが着いたタイミングで、側近の方が第2ラウンドに突入するのは防いでくれた

勿論私は心の中で拍手を送ったわ

流石側近

いい仕事をされるのね

でも出来るなら始まる前に止めて欲しかったけど


快楽から引き戻されて、不貞腐れてしまったオナグル様の理不尽な暴言と暴力に耐えかねた側近の方が1人、慌てたように部屋を出て行った


「ちょっとあんた」

「はい!」

突然呼ばれてドキッとした


「何か拭くもの。もっと気を利かせなさいよ」

「はい!すぐに」

部屋に備え付けられているクローゼットからタオルを取り出してお二人にお渡しする

何とも言えない匂いが漂ってきて顔を顰めそうになるのを何とかこらえた


少しして側近の方が王達と共に戻ってきた

「あの女は?」


王を見るなりオナグル様が訊ねた

「当面生活ができるだけのものを渡して王都を出てもらうことになった」

「一人で?死ぬんじゃねぇの?」

オナグル様が笑いながら言う


どういうことかしら?もう一人誰かがいたということ?


「クロキュスが彼女についていく」

「クロキュスって?」

「親父の側近の一人。あの広間で一言もしゃべらなかった奴」

「あ、あのイケメン!?」

歌姫が身を乗り出した


「ダメよ。あの女にあんないい男がついて行くなんて…」

…歌姫は一体何をおっしゃってるのかしら?

理解に苦しみ側近の方を見ると顔を反らされてしまった


「オナグル様!彼を引き留めに行きましょう。どこに向かったの?!」

「騎士団に馬車を出すように言ってある。そっちに向かうはずだが」

勢いに押されて王が答えた

あ、何か力関係がおかしい気がする


「そこの!その場所に案内して!」

突然立ち上がった歌姫に皆が従う様についていく


あの体のどこにこんな体力があるのか…

息を切らせて走った先でも驚く発言を繰り返していた

オナグル様との会話も、私達にはどうもかみ合ってないように見えるのに当人たちは納得してるようで逆に理解に苦しんでしまう


私こんな人についてなきゃいけないなんて…本当に勘弁して欲しい

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