閑話3.巻き込まれた侍女(side:王宮 歌姫の侍女)
閑話3-1
それは突然のことだった
侍女長に呼ばれて連れてこられたのは防音効果の施された小部屋
「君には歌姫付きの侍女になってもらう」
オナグル様はそう言った
地下の広間で何か重要なことが行われている、というのは聞いていたけどそれが何かは分からない
でも広間から出てきたオナグル様にしなだれかかる様に立つ女性がいた
その方が歌姫で、その方の侍女になれということらしい
とてもきれいな方だと思った
「仰せのままに」
形式的な返答と礼を行い跪く
この国では事あるごとに王族に跪くことが要求される
ドレスで着飾った女性もよその国ではカーテシーやお辞儀で済むことまでだ
王族至上主義
その言葉を湾曲したかのように王族は自らが絶対の存在だと振舞う
逆らうことは勿論許されないし、周りが床に這いつくばるのを好むらしい
室内に限らず外でも要求されるこの動作は正直無駄な動作だと思うし、そこまでして優位に立ちたい理由が分からない
「歌姫のことは限られた者にしか知らせない。侍女は君一人、メイドは側近の身内の2人だ。他に漏らしたりすれば一族と共に路頭に迷うことになると思え」
「承知しました」
正直に言えばそんな仕事は受けたくない
だからといって私に拒否権などないから仕方がない
歌姫の側に張り付きその手足となることを要求された
そして歌姫の部屋以外で歌姫の側を離れることは何があっても許されないという
王族からの指示でも例外はないと言われるとちょっと怖いんだけど…
そんなに重要な人物ってことかしら?
そう思いながらも従うまでだと半分ムキになりながら側に張り付いた
それがまさかこんな思いをするなんて思わないじゃない?
さっき広間から出てきたところなのに、歌姫はオナグル様の手を取り自らの胸に持って行く
「歌姫?」
「この通りドキドキしてるの。体も熱くて…沈めてくださらない?」
囁くように言う言葉でも側にいる私には聞こえる
まさか誘惑してる?
信じられず思わず2人を凝視してしまった
だってこの国は婚前交渉した女は、誰かの妾になるか娼婦になるかの2択なのよ?
それなのに自分からそんなことを言うなんて…
しかもためらうオナグル様をさらに誘惑して、それでも理性を保とうとするオナグル様に痺れを切らしたのかしら?
歌姫は突然自らスカートの裾をたくし上げた
「え…?」
突然視界に入ってきた歌姫のスカートの中
そこに下着はなかった
歌姫がソファに座るオナグル様にまたがったかと思うといきなりはしたない声が響いた
まさか…自ら…?
多分私は驚愕の表情をしてたんじゃないかしら?
そんな私を現実に引き戻したのはオナグル様の声だった
「くそっ…もういい。別の形で側に置く…」
それまで耐えていたオナグル様はタガが外れたように歌姫の腰に手を添えた
何で他人の行為をこんな近くで見なければいけないのかしら…?
聞きたくなくても耳に入ってくる煩く響く歌姫の声に辟易する
さらに異変が起きたのは、この場から去れないことへのストレスを感じているときだった…
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