13.これからのこと

13

ジョンやカメリアたちとルールを決めて3日

少しずつみんな屋敷内での生活に慣れてきた


「問題は安定した収入よね」

「は?」

サロンで庭を見ながらボソッと呟いた私の言葉にロキが顔を上げた

手元のあるのは何かの書類だろうか


「ジョンとカメリアをここに引き留めれたのはいいとして、問題は2人に出す報酬をどの手段で手に入れるかってことかなって」

「だから金なら…」

「それはダメ」

自分の金を使えばいいと言おうとしたロキを遮り首を横に振る


「何でそこまで頑なになる?」

「ん…なんていうのかなぁ…」

どう説明すれば伝わるだろうか?

少し自分の中で思案する


「あの2人は私がいて欲しいって思ってるの。だからそのための費用はちゃんと自分で準備したい」

「…」

ロキは真っすぐこっちを見ていた

もっとちゃんと伝えたいのにどう言葉にすればいいかが分からない

それが凄くもどかしく感じた


「分かったからそんな顔すんな」

伸びてきた手が髪をクシャりとなでる


「依頼受けるなり迷宮潜るなりしてから考えてみるか?一人で行かせるつもりはないけど」

「別に一人でも…」

「却下」

ロキはキッパリそう言った


「お前のランクは分かってるけど、俺でも極力一人では行かないって言えばわかるか?」

俯く私にロキは語り掛けるように言った


「…魔物も迷宮も人の理から外れたモノってこと?」

それは元の世界でも何度も口にし、他者からも言われた言葉だ

人の常識が通用しないモノたち

そして、想定外のことが起こることが当たり前の場所

だからこそ高ランクの者でもソロで動く者は少なかった


こちらの迷宮は他者との共有空間みたいだけど、元の世界ではパーティーを組んでいない者は別空間となっていた

つまり非常事態が起こっても誰にも助けてはもらえない

そのために即席パーティーは当たり前のように乱立していたし、ソロの冒険者も迷宮だけは2人以上で潜るのが定説だった

低ランク迷宮でもある日いきなり高ランク迷宮に進化することがあったからだ

迷宮が進化するのはこっちでもあるらしいけど


「そういうことだ」

「…ロキはいいの?」

「俺は特別することがあるわけじゃないしな。お前といれるなら家だろうが迷宮だろうが森だろうが関係ない」

「!」

とんでもない殺し文句が飛んできた


「依頼受けるにしても迷宮潜るにしても何回かやってりゃ相場もわかんだろ?細かいことはそれから考えればいい」

「そう…だね」

魔物の素材によっては1つでジョンとカメリア数か月分ということも十分あり得るのが冒険者の世界だ

そう考えれば今考えるより相場を見てから考えた方がいいのかもしれない


「じゃぁお願いするね」

「ああ」

満足げに頷くロキを見て本当に何事からも守ろうとしてくれてるんだろうと思うとちょっと照れ臭くなった

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