9-3
「ロキ、少し話をしない?」
カメリアたちの部屋を出てすぐに私はロキに尋ねた
「ああ。別にいいけど」
頷くのを見てキッチンに向かうとカウンターでコーヒーを準備する
「サンキュ」
カップを置くとロキは早速口に運んでいる
「お前の言ったとおりだったな」
「え?」
「報酬のこと。カメリアにはビックリだ」
「流石に私もビックリだわ。少なくとも私なら家賃分手元に残るって喜ぶ」
「俺も」
2人で笑いあう
「とりあえず王には領主も監査対象に入れるよう進言しとく。こんなことがそこら中で起こったら王家の信用問題になるからな」
「そうね…辺境だからといって許される問題じゃないわ。あまりにもひどすぎる」
ただでさえ安い報酬のなかから道具や材料の代金も支払うなどありえない話だ
王家が絡んでいる以上、待遇がここまで悪いのは異常ともいえる
ひょっとしたらこの話の裏には領主の横領も絡んでるかもしれない
そうなるとかなり大きな話になってしまうけど、進言するロキは王の側近だっただけにうまくやるだろうとも思う
でも、それを抜きにしても気になるのは…
「カメリアはそれが酷いとさえ思ってない。町の中での常識なのかカメリアが特殊なのかは分からないけど…」
「少なくとも自分の価値を安く見すぎだな。元からそうだったのか、環境がそうさせたのか…自信のなさの表れもあるのかもしれないが」
「望めないじゃなく望まないだったもんね…この広さでこの状態を一人で維持するなんて相当だよ?」
「普通なら最低でもベテランが3人は必要だな」
交代しながらだとそれくらいが妥当だとロキは言う
私もそう思ってるから異論はない
「使ってない部屋は毎日する必要がないと言っても放置するわけにはいかない」
「コルザとロベリも手伝ってるだろうし…2人はお駄賃、用意しようかな」
「お駄賃?」
「報酬にすると仰々しいけど、したことに対する報酬は必要でしょう?」
「そうだな」
「でも子供にまとまったお金を払うのは違う気がするし…だからお小遣い程度のお金かお菓子かしら?」
「なるほど…」
ロキは頷いている
「カメリアのお手伝いって形の時はとりあえず置いとくとして、私が直接お願いする時とかは別かな。少しずつ自分が動くことがどういうことか覚えてくれたらいいなって思う」
何かお手伝いをするたびにわずかな小銭を貰って喜んでいた子供の頃を思い出す
自分にも役に立つ何かを出来るということがとても嬉しかった
「じゃぁ俺もそうするかな」
そう言ったロキに笑みがこぼれる
「何だよ?」
「ん~ロキも下の兄弟がいたのかなーって」
「…」
軽く言った言葉だった
でもロキは一瞬困惑したような目をして黙ってしまった
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