7-2
「報酬はどうなる」
ジョンは少し考えてからそう言った
「今までの報酬をお聞きしても?」
「…この小屋に住まわせてもらう代わりに月10万シア」
かなり不満そうな表情だ
これだけの仕事をする職人の報酬としては実際かなり安いと思う
「それはお一人当たり、ですよね?」
「いいや」
ジョンは首を横に振った
2人で10万シア
住む場所があるとはいえ、これはどう見ても倉庫の役割を果たすのが精一杯の小屋である
「他の物件が同様になってないか確認するように連絡しとくよ」
ロキはため息交じりに言った
「ジョンは月10万シア、ウーは月5万シアで働いていただくことは可能ですか?」
「10万…2人で15万…」
ジョンが呟いている
提示した金額が低いことは私も承知してるけど、代わりにもう一つの条件も提示することにした
「住む場所は屋敷に用意させていただきます。もちろん食事も。報酬に関しては働きを見て増やすことも検討します」
「「え?」」
2人は顔を見合わせる
「住む場所ってこの小屋じゃなく?」
「食事までか?」
これまで小屋の片隅が与えられた住居だったことを考えればこれは大きいはず
でも家はほったらかしにしても傷むだけだしね
「この屋敷、馬鹿みたいに部屋があるのに私達2人だけしか住人がいないんです」
私は苦笑しながらそう言った
「できればこのあたりの事も教えていただきたいし…何より有事の際にこの庭を守れるのはお二人だけですから」
そう言うとジョンの目から涙が零れ落ちる
「親父泣くなって…」
ウーがジョンの背をさする
「俺にとってこの庭は子供のようなものだ…ここにいれるだけじゃなく仕事を認めてもらえるなんて思ってもみなかった…」
住居込みとは言え2人で10万、それが彼らの価値としてつけられた値段だったのだ
私としては有り得ない
ジョンの腕はかなり高い
今提示した10万シアなど破格だとわかっているものの、これまでの報酬を考えればこれ以上の金額設定は逆に不信に繋がるだろう
そう考えてひとまずこれまで通りの報酬にウーの分を上乗せして提示したまでの事
2人がここにいてくれるのであれば報酬を上乗せしていくのは簡単なことだ
「俺らの部屋って…」
「どこがいいかしら?ほとんど空いてるんだけど」
「一番狭い部屋を2人で使わせてもらえたらそれで充分だ」
「え?」
「今までこの小屋に2人でおった。それが突然1人になると逆に不便だからな」
なるほど。そういう考え方もあるのか
「俺はできれば3階がいい。足腰鍛えるのもあるけど高いところからの方が庭全体を見渡せるから」
ウーが少しワクワクしたように言う
「なら3階で好きな部屋選べばいいんじゃないか?ベッドが1つしか入ってないから別の部屋のを運べばいい」
「そうね。じゃぁロキ、ウーと一緒に行ってくれる?」
「了解」
ロキは頷きウーを促して先に入っていった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます