7-3
「そうだジョン」
私にはまだ引き留めておきたい人がいる
「何だ?」
「この屋敷を掃除してくれてた方の連絡先をご存知?」
そう尋ねるとジョンは少し険しい顔をした
「…そいつも呼び戻すのか?」
「できればお願いしたいと思ってます。ダメでしょうか?」
「いや。喜ぶだろう。俺の幼馴染が1人で請け負ってた」
「まぁ…」
「ただ…」
「ただ?」
言いよどむジョンを促す
「下の娘がまだ3歳だ。他に5歳と7歳の息子がいる」
「じゃぁ5人家族?」
「いや。旦那が魔物に襲われて2年前に死んだ。ここの掃除は子供たちを連れてきてもいいと言われていたから続けられたんだが…」
ジョンが私を見る目は、お前はそれを許せるのかと問うているようだった
実際たまに訪れる持ち主なら子供たちを連れてきていても支障はないだろう
それが定住するとなると許されなくなることが多い
ジョンの心配はもっともだと思う
「その方たちはどこで生活を?」
「町はずれの長屋だ。ここの報酬の7万シアで母子4人暮らそうと思ったら環境が悪かろうが長屋に住むしかないからな。それでも家賃だけで4万シア持って行かれる」
ため息交じりの言葉に驚くばかりだった
この広い屋敷を1人であのレベルで維持してるのに報酬が7万シア
ジョンといい本当に考えられない低賃金で雇われていたようだ
あの王に対する怒りが私の中に沸き上がったのは言うまでもない
「…その母子もここで暮らしてもらうことは可能かしら?」
「は?」
ジョンは信じられないという目を向けて来る
「子どもが3人もいるんだぞ?」
「ええ。だからこそここに住んでもらえば、その方も安心して働いてもらえるでしょう?ダメかしら?」
「いや、むしろ喜ぶとは思うが…」
「本当?できればジョンから話をしてもらいたいんだけどお願いしてもいいかしら?」
「それは構わないが…お前さん本気か?本来の住人より従業員の家族の方が多くなるぞ?」
「もちろんです。大勢での食事、楽しみだわ」
「…」
呆れたように見られてるような気がするけど気のせいよね?
そう思いながらジョンと話を詰めていく
「…じゃぁこの後本当に呼んできてもいいんだな?」
一通り決めたあと、ジョンは念を押すように尋ねてきた
「もちろんです。荷物も運べそうなら一緒に」
「わかった。じゃぁ俺もこの荷物を部屋に運んだらウーと一緒に行ってくる」
「4人に会えるのが楽しみだわ」
そう言いながら私もジョンの荷物運びを手伝いながら屋敷の中に入る
「親父!主に荷物運びさせるとかないだろ…」
「俺は断った」
ジョンは不貞腐れたように言う
「ふふ…じゃぁ続きはウーがお願いね」
「了解」
ウーに荷物を渡すと2人は何か話しながら階段を上がっていった
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