5-3
そんな中イモーテルのその言葉に真っ向から反対したのはオナグルだった
「大勢を愛す必要などないぞ。歌姫は俺だけの歌姫だ。先ほどその契約もしたじゃないか。それを自ら破る様な真似はしないよな?破ればそなたの精神は崩壊され操り人形と化すのだからな」
「契約?いつ?」
イモーテルは首を傾げる
「俺の腕の中で愛らしく鳴いてた時だよ」
「は…?」
「俺の側にいると、俺だけを見ると、この愛らしい口で誓っただろう?」
オナグルはそう言いながらイモーテルの唇に触れる
「確かに言ったけどあれは…ほら、あーいうことしてる時は流れで誰でも言うじゃない?」
いや、言わないから
というかそもそもそう言えない相手とそういう関係は持たないから
私は心の中で突っ込んでいた
「今さら何と言おうと取り消しはきかない。クロキュスも言った通り俺に抱かれた時点で王族に忠誠を誓うという契約が自動的になされている。そして歌姫が誓いを口にした時点で俺との契約が成立しているからな。もし破れば死と等しい結果が待っている」
オナグルは嬉しそうにそう言いながらイモーテルを抱き寄せた
「私が呼び寄せた歌姫だ。他の誰にも渡しはしない」
「イヤよ。私は…」
「出来るだけ早くお披露目をしよう。そのためのドレスや宝石も準備しなければならないな」
「ドレス…宝石?」
遮って発せられた言葉にイモーテルの顔つきが変わる
彼女はそういったものに目がないのだ
きっと先ほどまでの会話は掻き消えてしまった事だろう
「オナグル様、我々は失礼させていただきます」
もうこの茶番に付き合う必要はないと判断したのかロキが言う
「ああ」
私たちなどどうでもいいというように、オナグルはドレスや宝石という言葉に吸い寄せられたイモーテルを促し王宮の方に戻っていく
「すごい女だな…」
ロキの言葉に苦笑しか出てこない
「お前はよくあれに冷静に対応できるな?」
「まぁ…20年の付き合いだしね」
「幼馴染と言っていたか…」
「そう。親同士が仲が良くてどちらかと言えば腐れ縁?昔から一方的に敵意を持たれて迷惑してる」
「比べるまでもないだろうに」
「?」
「沢山の男からの寵愛と言えば聞こえはいいが、言い方を変えればただの淫乱だろ?あの短時間で股を開いたってことは、元の世界でも体を武器にしてたってことだろうしな」
ド直球な言い方をするとある意味清々しい
「これからはそうはいかないだろうし、あの調子なら簡単に契約を反故にするだろうな」
「あの王太子ならどんな罰を?」
「そうだな…歌姫への執着は異常なものだからな…良くて軟禁、悪くすりゃ拘束して監禁か…魔術による洗脳もありえるか。どう転んでも手放すことはないだろうな」
「…召喚するくらいだもんね」
それはただならぬ想いなのだろう
何があっても向けられたくはない思いだけど…
イモーテルは死ぬまでオナグルの側にいるのだろうと、この時誰もがそう思っていた
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