5-2
「それが何?私は歌姫なの。沢山の殿方の寵愛を受けても構わないじゃない」
それは男を侍らせるということだろうか…?
イモーテルのおバカ発言に流石にため息が出る
「一つだけ教えて差し上げましょう」
「何…かしら?」
「この国では王族の寵愛は絶対です。王族の寵愛を受けた者はその者以外の異性からのいかなる干渉も許されません」
「は…?」
イモーテルがポカンとする
「そういうことだ。たとえ側近と言えど警護以上の干渉は許されない。歌姫は俺だけのものということだ。歌姫に手を出した男は一族含めて奴隷落ちとなる。対象の者には額に入れ墨が現れるから逃れることも叶わない」
オナグルが満足げにそう続けた
「何…それ…ちょっと待ってよ!私は歌姫なのよ?前の世界でもみんな私に夢中だったのよ?それをオナグル一人で満足しろということ?」
「言葉にはお気を付けください。歌姫自身が他を望む発言は王族への冒涜となりますゆえ」
「どういう意味?ちょっとオリビエ、わかるように説明してよ」
イモーテルが私の方を見てそう言った
「…あなたはそこの王太子オナグルだけを愛しなさいってこと。それ以外の男に目を向けたり関わろうとするのは勿論、オナグルを尊重しない言葉は全て悪口と受け取られるみたいね」
「ありえない…」
イモーテルは不快を隠そうともしない
「気になったんだけど…この子がそれをしたらどうなるの?」
「万が一そのようなことをなされば一切の自由は無くなるものと…」
「というと?」
「すべては王族の意のままではありますが、過去には奴隷落ちをはじめ牢や娼館、鉱山の男たちの元に送られた者、死を迎えるまで王族の部屋で飼われた者など様々でございます」
側近は表情も変えずに淡々と告げた
「ねぇ、何なのよ?」
相変わらず理解力がないらしい
「イモーテルがオナグルを尊重しなければ奴隷落ちかそれに近い扱いをされるってこと。それがイヤならオナグルだけを愛し続けるしかなさそうね」
イモーテルから『ガーン…』という吹き出しが見えた気がした
「そこまでかみ砕かなければ理解できないのですか?」
側近が少しためらいながら訪ねてくる
「ステータス、確認なさったでしょう?知性5がこの世界で何歳くらいかを考えていただければよろしいのでは?」
「なるほど…」
頷きながらも戸惑いまでは隠せていない
せいぜいこれから頑張ってかみ砕いて話をして欲しいものだ
「馬鹿にしないでよ。それよりオナグルだけを愛し続けるって何よ?歌姫は大勢を愛する存在でしょう?」
幼い頃から女神様気取りのイモーテルらしい言葉だ
大勢を愛し、その愛は全て倍以上となって自分に返ってくると信じて疑わない
私がイモーテルのその考えをただすのは10歳になる前に諦めたけど、それを理解させることが出来る人がこの側近の中にいるのかしら?
ぱっと見たところ呆れている人ばかりのようだけど…
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