2-2

「いくつかお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「何だね?」

男は少し張りつめた空気を纏う

他の3人も同時に私を見た


「元の世界に戻していただくことは可能なのでしょうか?」

「…召喚するのに費やした期間は10年以上、そう言えばお判りいただけるか?」

つまり、その期間をかけてまで巻き込まれて召喚されたものを帰すなどありえないということなのだろう

濁した言葉をどこかですんなりと受け入れている自分に驚いた



それにしても『歌姫』を召喚しようとした理由が分からない

「…を召喚した理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

通常であれば勇者や聖女と呼ばれるスキルを持つ類が望まれる

その中でなぜ歌姫だったのか

とりあえず新たに生まれた疑問を投げかける


「あぁ、あれの母親が歌姫だったせいだ」

「彼の母親、あなたの奥様ということですか?」

「そうだ。だが10年前に病でこの世を去った。それ以来あれは歌姫だけを盲目的に探した」

「…」

「この世界では生まれた際にスキルが登録される。その中に歌姫のスキルを持つものはいなかった。故に召喚したというわけだ。あぁ、失礼。まだ名乗ってもいなかったな」

男はそう言って一度姿勢を正した


「私はこの世界フーシアにある4つの国の1つ、ソンシティヴュの王でナルシス・ソンシティヴュだ、息子はオナグルと申す。先日22の誕生日を迎えたところだ」

「…ご子息が12の頃から望み続けた歌姫、ということですか」

「そうなるな。召喚するならせめて聖女をと説得を試みてはいたのだが…準備が整った途端あれは勝手に歌姫を召喚したというわけだ」

「そんなことが可能なのですか?」

「最後のカギは王族の魔力だ。つまり私でなくあれでも可能ということだな」

「…」

この言い方からすると王にも何か思うところがあるのだろうか

まぁ10年かけて準備しておきながらわざわざ『歌姫』を召喚するなんて、愚かにもほどがあるとは思うけど


「さっきの様子を見る限り相当気に入ったようだ。婚約者のいないあれが歌姫を娶りたいと言い出すのも時間の問題だろう」

「イモーテルをオナグル様の婚約者にということでしょうか?」

「あれはそのつもりだろう。反対する理由もないが」

ナルシスはそう言ってため息をつく

22歳になったばかり何だっけ?

婚約者が決らなかった理由が分からないけど王族でそれってどうなんだろ?


「ただあの様子ではあなたをこの王宮にとどめておくのは難しいだろう。歌姫との仲も険悪なようだ」

「…まぁ、険悪というか一方的に敵意を持たれてはいますね。一応幼馴染なのですが」

「なるほど。元々強いつながりがあったということか…しかしどうしたものか…」

王は再び困惑気味の表情を見せた

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