2.必要とされる歌姫とそうでない者
2-1
私の今後について、彼らはかなり悩んでいるようで中々決まらなかった
正直早くこの場所から立ち去りたい
そんな中でも若い男はイモーテルのそばから離れず、イモーテルもその男にうっとりして寄りかかっている
見知らぬ世界でよくそんなことが出来るものだとある意味感心するわ
権威のある者とお金の大好きなイモーテルらしいと言えばそうなんだけど…
「それにしても俺の望んだ歌姫がこれほど愛らしい人だったとは…」
「まぁ、愛らしいだなんて…でもお眼鏡にかなったなら嬉しいわ」
まんざらでもない顔でイモーテルは言う
「望んだ以上の美しさだ。歌姫は私の大切な人となるだろう」
「大切な人、ですか?」
「ああ。父上の次にこの国で力を持つ俺のことを、歌姫が拒まないでくれたらの話だが…」
「私がそんな方を拒むわけないじゃないですか」
イモーテルは当然のように言う
あの男の頭は大丈夫なのかしら?
ただ『歌姫』のスキルを持っているだけで、その素性も何もわからない相手にそんな言葉を口にしたら後々問題になりそうなもんだけど
「本当か?突然召喚されて怒ったりは…」
「そりゃぁ…驚きはしましたけど…でもあなたのような素敵な方に大切にされるなら、文句なんてあるわけないじゃないですか」
完全に2人の世界に入っているらしい
よくぞまぁこんな場所でと思いながら周りを見てみると…
そんな2人のくだらないやり取りを周りの者が居心地悪そうに、視線をそらしながら気にかけているのが見て取れる
当然そうなるわよね
「それにしてもまだ決まらないのか?」
ようやくイモーテルから目を離した男は少し苛立ちを見せている
「ねぇ、私がいれば十分なんでしょう?」
イモーテルは私の方を見てそう言いながらニヤリと笑った
もう嫌な予感しかしない
「そうですよ父上、この美しい歌姫がいれば十分です。そちらの方もそれなりに美しいとは思いますがね」
その言葉にイモーテルは嬉しそうに笑う
「不要な人はさっさと追い出しちゃえばいいんじゃない?私少し疲れたみたい。ねぇ、どこかで休ませてもらえないかしら?」
男によりかかりながらイモーテルは言う
「父上、俺たちは先に戻りますよ?歌姫がお疲れのようですので」
「ああ。分かった」
この息子に何かを言っても無駄だと理解しているのかあっさり受け入れられたようだ
それはそれでどうかと思うけど
「じゃぁね、オリビエ。この先会うことがあるかは分からないけど、せいぜい頑張ってね」
イモーテルはケラケラと笑いながら、若い男と出て行った
その後ろを側近と護衛と思われる数名がついていく
仕事とはいえ、いい年をした男の子守のような役割は大変そう
普通ならそれを正すのも彼らの役目のような気がするんだけどね
”パタン”とドアが閉まると、この場に残されたのは目の前にいた代表格の男と、その側近と思われる男が3人
私の今後についての話し合いが当分続きそうなので、先に聞きたいことを聞いてみることにした
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