第56話

「着きましたね」

「そうだね」


 以前から計画していた旅行に行くこととなり、朝から長旅だったけれど予定していた某温泉で有名なところまで来ていた。


 だが計画と違っていたところは、僕と花蓮二人だけではなくて楓も来ていることだ。


 どうせ行くなら、三人でも変わらないし、楓がいた方が楽しいからね。


「ねぇ、桜君。あそこでお饅頭の試食やってるから食べに行かない?」

「いいね、行こうか」


 楓に手を引かれて、試食をしてみると確かに普通のお饅頭とは違った触感と味がする。


 とても美味しい。


「チェックインまでまだ少しありますから、少し見て回りましょうか」

「そうだね」


 三人でいろいろなところを見て回る。


「あんなところに足湯がありますよ。行きませんか?」

「いいね。いこうか」


 三人でゆったりと足湯につかる。


 すごく気持ちがいい。


「気持ちいいですね。兄さん」

「そうだね、すごくいいよ」


 花蓮がそっと僕の肩に自分の頭を寄せる。


 すると、逆からは楓の頭が僕の肩に。


「こうしていると本当に幸せですね」

「そうだねー。こんなにゆっくりとした幸せな時間を過ごせるなんてね」


 楓と花蓮は甘えるように僕にくっついてくる。


 前から思っていたけれど、花蓮は分かるとしても楓は最近距離が近いよなぁ。楓が嫌がっていないから、僕はなにも言わないけれど。


 楓みたいな美人にくっつかれて悪い気はしないから。


 二人とゆったりとした雰囲気で時間をつぶしていると、いつの間にかチェックインできる時間になったので、足湯を止めて宿に行く。


 ここの宿がすごく評判みたいだ。その分お高いけれど。


「すごいね、ここ。この和風な感じすっごく好き」

「分かる。この雰囲気はまさに日本って感じ」


 障子、それに畳の部屋。外を見るとすごく良い景色。


「さて、じゃあちょっくらお風呂に入ってきますか」


 この宿、露天風呂もあるみたいで夜になればさらに美しいだろうけれど昼間のうちに入るのも乙だろうということで早速入ることにする。


 ゆっくりと入り三十分後、お風呂から出て待ち合わせをしている場所に。


 まだ、花蓮達はいないようなので近くで売っていたコーヒー牛乳を買って一気に飲み干す。


 お風呂の後の冷たいコーヒー牛乳は最高だ。


「お兄ちゃん、お待たせ」

「待たせちゃってごめんね」


 振り返ってみると、浴衣を着た色っぽい二人が僕のことを見ていた。


 これは、男として褒めた方がいいのだろうか。


「えぇ、っと二人ともすごく似合ってるよ。綺麗」

「ふふっ、ありがとうございます」

「ありがとね、桜君」


 二人が笑顔で微笑んでくれる。


 だけれど、その笑顔が歪んで見えたのは気のせいだろうか


 





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