第41話

「お、お邪魔します」


 桜木さんは、おずおずと入っていく。


 桜木さんならこれまで男の人の部屋くらいは入っていそうだけれど、もしかして初めてなのかな?


「そんなに緊張しなくてもいいよ」

「う、うん」

「じゃあ、リビングに行きましょうか」


 桜木さんを連れてリビングへ。


 僕が桜木さんにお茶を出そうと思ったら、花蓮にその仕事を奪われてしまったので、僕はいったん部屋に戻って部屋着に着替える。


それにしても、桜木さんと花蓮はかなり仲がいいみたいだな。


 花蓮が家に友達を呼ぶことなんて今までなかったから、兄として嬉しい。


 リビングに戻ると、桜木さんと花蓮はソファに座っていた。


「兄さん、こっち来てください」

「夕顔君、来て」


 二人に言われるままソファに座ろうとするけれど、何故か二人が両端にいるから僕が真ん中に座ることになる。


 ソファに座ると、二人とも下校の時のようにぴったりと僕にくっついてくるので戸惑ってしまう。


 今まで、絶対にこんな風ではなかったと思うだけれど、二人とも全然気にした様子もないので僕が変なのかもしれないと思ってしまう。


「そう言えば、花蓮と桜木さんが何か話があるとか遊びたいとかなのに、僕がいて邪魔じゃないの?」

「大丈夫ですよ。私は、三人で一緒に遊びたいなと思っていたので。まぁ、確かに話したいことはありますが、今でなくてもいいので」

「私も、桜木君と一緒に遊びたいな」

「それなら、いいけれど」


 ふたりともそう言って、また少しだけ距離を詰める。


 もうすでに、密着しているといっても過言ではないほどだ。


 まずいな、二人ともそんな気はないのに僕だけそういう感じなのもおかしいので空気を変えよう。


「ふたりとも、ゲームしない?」

「いいですよ、やりましょう」

「私もしたいなって思ってたの」

「あ、でもゲーム機僕の部屋にしかないんだけれどいいかな?」


 そう言うと、桜木さんは頬を上気させながらこくりと頷く。


 やはり桜木さんは、男の人の家に行ったことがないみたいだ。


 僕は僕で、女の人の部屋に行ったことないし呼ぶのも今回が初めてだから少し緊張するけれど、さっきのやましい気持ちを払拭するためにゲームで気持ちを紛らわせたい。


 三人で僕の部屋に移動しようとするけれど、僕の部屋の前で桜木さんが少しだけ固まってしまう。


「そんなに、大したものはないから大丈夫だよ」

「う、うん」


 桜木さんがここまで緊張してくれているおかげで僕が緊張せずに済んでいるからありがたい。


 そして数分間待ってからやっと僕の部屋に入ってきてくれた桜木さん。


 何故か、目が開ききっているのは何故なのだろうか。


 




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る