第25話

「桜木さん、ごめん。少し待たせちゃったよね」

「全然、大丈夫だよ」


 球技大会も来週に迫った、今日この頃。


 如月とは一緒に帰れないと言われたため桜木さんと一緒に帰る事になった。


「夕顔君、足の怪我はもう大丈夫?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」


 桜木さんは僕が怪我をしてから、何度も僕の事を心配してくれた。


 そこまで大きなけがじゃないんだけれどな。


 桜木さんと一緒に歩き始めてから数分後。いつもとは違うことが起こった。


「あ、こんにちわ。兄さん」

「え、あ、花蓮」


 花蓮とばったりと出くわしてしまう。


 そして、花蓮が僕の事を兄さんと呼んでしまったのを桜木さんの聞かれてしまった。


「え?あ、この子ってあの学校で有名な夕顔花蓮ちゃん?」

「はい、私、夕顔花蓮って言います」


 .............桜木さんなら、大丈夫だろう。


「桜木さん、実は学校では秘密にしているけれど僕たちは兄妹なんだ」

「え、そうなんですか!?驚きました」

「ご、ごめんなさい。兄さん。私、口が滑ってしまって」

 

 花蓮は、今その事実に気づいたのか、慌てて僕に謝る。


「大丈夫だよ。桜木さんも秘密にしてくれるかな?バレたら少し面倒くさいから」

「分かったよ。夕顔君からの頼みだもん」


 桜木さんは快く頷いてくれた。


「あ、でも、おんなじ苗字だから区別しずらいなぁ」

「あ、それなら僕の事を名前で呼ん.............」

「私の事を花蓮って呼んでくれると嬉しいです」


 そこで、強引に割り込んでくる。


 そんなに桜木さんに名前で呼んでほしかったのかな?割と、相性がいいとか?


「じゃ、じゃあ、花蓮ちゃんって呼ぼうかな」

「お願いしますね。桜木さん」

「花蓮ちゃん、私の事も名前で呼んで欲しいかな」

「じゃあ、楓さんよろしくお願いしますね」


 二人はニコニコとほほ笑みながら談笑する。


 凄く仲がよさそうに見える。


「二人とも仲よさそうで良かった」

「そう見えますか?」

「うん。僕は二人が仲良くしてくれると嬉しいからさ」

「そうなんだ」


 未だに二人はずっとニコニコしている。だけれど、何故だろう何故か途轍もなく不安になる。


何だろう、この胸のもやもやは


「兄さん、行きましょう」

「夕顔君、行こう」

「そうだね」


 まぁ、僕の気のせいだろう。


 だって、二人はあんなに仲がいいんだから。


 並んで歩く二人を追いかけた。

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