第24話 食べちゃいたい
私は、この午後の授業の時間が好きです。
別に、この授業の内容が楽しいから、好きとかでは断じてない。あの教師の私を見る眼付凄く気持ち悪いし。正直、吐きそうな程だ。
では、何故この時間が好きかというと、グラウンドに見える格好いい兄さんの頑張る姿を見ることができるからです。
本当に最高。
今日はサッカーをするみたい。
ということは、再来週の球技大会はサッカーをするんだ。絶対に応援に行こう。でもこっそり兄さんに応援してもらうのも捨てがたいな。
私は、球技大会の妄想を膨らませる。
「夕顔さん、ここの問題を」
「x=2 y=7です」
「せ、正解です」
私が、難なく答えると脂ぎった顔をさらに脂ぎらせてこっちを見てくる。
大方、私が外を見ていて授業を聞いていないと思い、困らせてやろうとか言う小学生じみた考えでしょう。
はぁ、そんな豚より私は兄さんです。
兄さんたちのクラスはサッカーを始めました。
心の中で精一杯兄さんを応援します。
頑張れ!
ここからでは、汗が垂れているのは分かりませんが、一生懸命走っている兄さんのですから、汗は一杯でしょう。
舐めたい、そういう衝動に駆られてしまいますがここからではどうやっても無理ですし、兄さんの事を純粋に応援したいですから。
兄さんを応援していると、悲劇が起きます。
私は、思わず胸を抑えてしまうほどです。
兄さんが怪我をしてしまいました。
故意ではないかと思いますが、相手のクラスの子とのボールの取り合いで転んでしまったみたいです。
私は席を立ち、
「先生、体調が悪いので少し保健室へ行ってきます」
「え、あ。あぁ、一人で大丈夫か?」
「はい」
「先生がついていくこともできるぞ?」
「いいえ、結構です」
どうでもいいので、さっさと教室から出て保健室へ。
ちらっと中を覗くと保険の先生がいたので、適当に他の先生が呼んでいたと嘘をついて、保健室を空にしておき、兄さんが部屋に入ってから、私も丁度いま来た風に演技をする。
兄さんの膝を見ると、痛々しい傷が出来ていて、思わず転ばした生徒を今すぐにでも地獄に落としてやろうと思いましたが、それはまた後で良いでしょう。
どうせ、私がやらなくても、あの女がすると思いますし。
見てるのでしょう?あなたも?
ちらっと、保健室の扉をみる。
うっすらと隙間が空いているのを確認する。
そして、兄さんの傷にそっとキスをして絆創膏をする。
兄さん、顔を真っ赤にしてとっても可愛いです。傷だけじゃなくて、他の所も舐めてあげたくなっちゃいます。
そのまま、兄さんは照れて速足で保健室から去っていく。
あの女の気配も同じように消えていた。
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