第20話 花蓮がお怒り

「ただいま、花蓮」

「おかえりなさい、お兄ちゃん」


 花蓮がいつものようにお出迎えをしてくれるが、何か変なような気がする。ずっと花蓮は笑っていて、少しだけ怖くなる。


「あ、あの花蓮?怒ってる?」

「いえ、怒っていませんよ。それより、早くお風呂へ入ってきてください」


 花蓮は、何事も無いように僕にそう言って、リビングに戻っていく。


 なんだか、怒っているみたいだし素直にお風呂に入ってきた方がよさそうだな。

そう思って、僕は部屋に荷物を置いてから、お風呂場へ直行。


 体を洗い、湯船に浸かる。


 僕、何かしてしまったのだろうか。今日の朝、何か花蓮に無意識に傷つけること言っちゃったのかな。


 .............悩んでいても、しょうがない。花蓮に謝ろう。


 浴槽から上がり、着替えてリビングへ。


 花蓮は、夕食をテーブルに並べていた。


「あ、あの。花蓮」

「それより、兄さん。運ぶの手伝ってください。お話はそれからです」

「分かった」

 

 二人で、料理を運び向かい合って席に着く。


「いただきます」

「いただきます」

「そ、それで花蓮」

「なんですか?」

「ごめん」


 そう僕が言うと、花蓮は持っていた箸を一旦机に置く。


「兄さんは、私が何に怒っているのかも正直分かっていませんよね?」

「.............はい」

「私は、凄く悲しいです」

「本当にごめん。そ、それでさ、どうして怒っていたのか聞いてもいい?」

「嫌です。でも、教えられませんが、許してあげることの出来る方法が一つあります」

「ほ、本当?」


 花蓮は、絶対に怒っている理由は教えてくれないが、僕が何かをすれば機嫌を直してくれるみたいだ。


 正直もやもやするし、何を要求されるのか怖いけれど、花蓮が不機嫌な方がもっと怖い。


「今日、私と一緒に寝てください」

「そ、それは.............」

「良いですよね?兄さん」

「うーん」

「いいですよね?」

「……うん」


 肯かないといけないと本能で察して、こくりと肯く。だって、花蓮がすごい目つきしているんだよ。


 まぁ、元々花蓮の言うことはなんでも聞こうと思っていたけれど。


 一緒に寝るかぁ。最近、花蓮の僕へのスキンシップが増えているような気がする。ついこの前も一緒に寝たし。


「あの、花蓮?他の事でも良いんだよ?例えば、僕が今日はお皿洗うとか」

「冗談は兄さんの行動だけにしてください」

「す、すいません」


 やっぱりダメか。


 というか、今の言葉でさらに機嫌が悪くなったりしたらどうしよう。





 


 

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