第12話 夕顔君
「はぁ......しゃいこう。夕顔君」
学校も終わり、私の癒しの時間がやってくる。
いつも放課後になったら、私の逢いたい、話したいって気持ちが夕顔君に伝わったら恥ずかしいからこっそり後を追ったり、偶然を装ってあったりするのがわたしの日課になっている。
今日も夕顔君が帰るところを尾行しているのだが、優しい夕顔君は先生のお手伝いをしているみたいだ。
やっぱり、すっごく優しくて紳士的。
あ、荷物を置き終わって帰るみたいだ。
きょ、今日は話しかけても大丈夫だよね。だって、みんな部活とか帰っちゃってるから人が少ないし、見られる可能性もないし。
そっと、近づいて偶然のように声を掛ける
「あ、夕顔君」
「桜木さん、こんにちわ」
「何してきたの?」
「先生の手伝いしてきた」
「偉いね」
本当に偉い。優しすぎ。大好き。
「あ、あの。夕顔君ってさ。今から暇なの?」
「暇だよ。帰るだけだし」
「あ、あのさ。私たち、途中まで帰る道一緒だから、一緒に帰らない?」
「いいよ。帰ろう」
本当に優しい。私と一緒に帰ってくれるなんて。
「夕顔君って、優しいよね」
「どうしたの?いきなり」
「だって、私のこと助けてくれるし」
「あれは、困ってたし当たり前じゃない?」
「そんなことない!!それにいろんな噂がある私とも普通に接してくれるし」
「だって、喋ったり接してみたりして桜木さんは普通だったし、噂はほんとじゃ無いんじゃないかなって思って」
「っ!!や、やっぱり夕顔君は優しいよ」
どうしようもないくらいに胸が高鳴る。より好きになってしまう。自分のせいだけれど噂を否定してくれて、私を肯定してくれる。
本当に夕顔君は......
「じゃ、じゃあさ…」
「うん」
「あの…い、嫌なら全然断ってくれていいんだけれど…ね?」
「うん」
「本当に断っていいからね?」
「大丈夫だよ」
今なら、優しい夕顔君なら断らないと思う。
そんな、気がする。
「あの…私と友達になってください!」
「はい、これからよろしくお願いします」
「え?あ、お、お願いします」
そ、そんなあっさりいいの?これで、堂々と話せるってことだよね?
それに......
「こ、これからも一緒に帰ってい、いい?」
「うん、僕も帰る相手いないから嬉しいな」
「ほ、本当?じゃ、じゃあさ、お昼、友達と食べない時、私と一緒に食べてくれる?」
「友達でしょ?そのくらい当たり前だよ」
「っ!!ありが、とう」
ま、まずい。嬉しすぎて、達してしまいそうになる。膝ががくがく震えるのを必死にこらえる。
「この前、僕が逃げちゃって連絡先交換してなかったから交換しない?あの時はごめんね」
「いいよ、大丈夫。交換する!!」
謝らなくていいのに。夕顔君に悪いところなんて何にもないんだよ?全部私が悪いの。
「これから、改めてよろしくね」
「うん」
えへ、えへへ、えへへへ。どうしよう、今日が私の命日になるのかな?
それから、夕顔君と別れ一人で帰路に就き、家に帰る。
自室に戻り、私は制服をハンガーにもかけず脱ぎ捨てベッドの上に横になり、徐に片方の手を自分の胸に置く。
そして、もう片方の手には夕顔君の連絡先。
私は、夕食の時以外、ずっとそのアイコンを見て悦に浸ったり……。
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