第11話 友達
「じゃあ、みなさんさようなら」
先生が教壇から降りて、教室を去っていく。
長い長い今日の授業が終わり、やっと帰りの時間となった。
荷物を背負い、如月に挨拶だけして教室を出る。
「あ、夕顔。ちょうどいいところに」
「なんですか、先生」
「これ、理科室に運んどいてくれないか?」
そこそこ重そうな段ボールを渡される。
「分かりました」
「ほんと、いつも助かる」
まぁ、帰ってもすることはないからいいけれど。
荷物を一旦教室において、段ボールを持って特別棟の方へ。理科室に荷物を置いて、教室の方へ戻る。
「あ、夕顔君」
「桜木さん、こんにちわ」
「何してきてたの?」
「先生の手伝いをしてきたよ」
「偉いね」
僕は、最近、別に桜木さんを避ける必要はないんじゃないかと考えていて、会ったら話すようにしている。所詮、噂は噂なんだなと思っている。
「あ、あの。夕顔君ってさ。今から暇なの?」
「暇だよ。帰るだけだし」
「あ、あのさ。私たち、途中まで帰る道一緒だから、一緒に帰らない?」
「いいよ。帰ろう」
別に断る理由はないので、一緒に帰ることにする。
「夕顔君って、優しいよね」
「どうしたの?いきなり」
「だって、私のこと助けてくれるし」
「あれは、困ってたし当たり前じゃない?」
「そんなことない!!それにいろんな噂がある私とも普通に接してくれるし」
「だって、喋ったり接してみたりして桜木さんは普通だったし、噂はほんとじゃ無いんじゃないかなって思って」
「っ!!や、やっぱり夕顔君は優しいよ」
そう俯いてもじもじとしている
「じゃ、じゃあさ…」
「うん」
「あの…い、嫌なら全然断ってくれていいんだけれど…ね?」
「うん」
「本当に断っていいからね?」
「大丈夫だよ」
ソワソワとしていて落ち着かないが、一度、大きく深呼吸をして僕の目をじっとみる。
「あの…私と友達になってください!」
「はい、これからよろしくお願いします」
「え?あ、お、お願いします」
とそう言って頭を勢いよく頭を下げる桜木さん。そんなに畏まらなくていいのに。
「ほ、本当に友達になってくれた…!!」
やったー!!と小さくガッツポーズを取っている桜木さん。
やっぱり桜木さんは、純粋な人なんだ。
「こ、これからも一緒に帰ってい、いい?」
「うん、僕も帰る相手いないから嬉しいな」
「ほ、本当?じゃ、じゃあさ、お昼、友達と食べない時、私と一緒に食べてくれる?」
「友達でしょ?そのくらい当たり前だよ」
「っ!!ありが、とう」
あ、そういえば…
「この前、僕が逃げちゃって連絡先交換してなかったから交換しない?あの時はごめんね」
「いいよ、大丈夫。交換する!!」
QRコードを読み取り、桜木さんを友達に追加する。
「これから、改めてよろしくね」
「うん」
桜木さんは嬉しそうにこくんと頷いた。
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