第13話

「桜、今日一緒に帰らね?」

「いいけれど」


 今日の授業も終わり、やることが無くなったので久し振りに如月と一緒に帰ることにする。


 最近、桜木さんと一緒に帰っていたし偶にはこいつとも一緒に帰りたい。


『すいません、桜木さん、今日は一緒に帰れません』

 

 そうメッセージを送ると、数十秒で既読が付く。

 

『分かりました、明日は一緒に帰りたいです』


 メッセージと一緒にアニメ調のクマが手を振っているスタンプが送られてくる。


『りょーかいです』


 僕もカエルのスタンプを送り返して、如月と一緒に帰る。


「今日、帰りにゲーセン行こうぜ」

「いいよ、いこう」


 二人で他愛のない雑談をしながらゲーセンへ向かう。


 あ、そういえば、花蓮にもメッセージ送らないと。


『ごめん、今日遅くなる』


 狐が土下座しているスタンプ。


『そういうのは早く言ってください。兄さんのバカ』


 花蓮は、学校で人気だが授業が終わると友達とかの遊びの誘いを全部断って速攻で家に帰って、夕飯とか家事をするから言わないと怒られてしまう。


『ちなみに、なんで遅くなるんですか?』

『如月と、一緒にゲームセンター』

『そうですか』


 そのメッセージとともにウサギがじーっと見つめてくるスタンプが送られてくる。

 

 私は、家事をしているのに兄さんはお遊びですか、という意味かな。


 本当にごめん。


「桜、はやくー」

「はいはい」

 

 如月を追いかける。


「今日何する?」

「えー、っとクレーンゲームかな」


 花蓮にお詫びの品として何かあげたいし。


 ゲーセンに向かうこと数十分で着き、回ってみる。


 花蓮は、別にアニメとかは見ない。僕が見ている時にたまに一緒に見る程度だ。


「あ、これとかいいかも」


 豆しばのぬいぐるみ。男の僕から見てもすっごく可愛いし、抱いている花蓮の姿も凄くかわいいと思う。


 まず、五百円を入れて様子を見る。


 アームで位置調整をして......。


「え?」


 なんと、タグのようなところにアームが入り、そのまま景品が取れてしまう。


 マジか。


 五百円入れちゃったし......。


 あ、今日一緒に帰れなかったし、桜木さんにもあげようかな。


 もう一体の方へとアームを操作し、掴んでみるけれど、さっきのようにうまくは行かない。


 最初に入れた五百円分を使い切ってしまったが、一度するって決めたし、桜木さんが喜んでいる顔も見たいから、とろう。

 

 追加で五百円を入れ、最後の最後に運よく景品をゲットする。


「うお、桜すげえな」


 マメシバを大切に袋へと入れる。


「なぁ、次格ゲーやらん?」

「いいよー」

 

 久しぶりのゲーセンでぬいぐるみをとれて、格ゲーも楽しめたし。僕は大満足だった。


 後ろにいる影にも気づかず。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る