第2話 僕の最愛の妹

「ただいまー」

「おかえりなさい、兄さん」


 いつものように出迎えてくれる、妹に涙が出そうになる。


「いい子に育ったなぁ」

「なんですか?急に」

「僕の妹はいい子だなってこと」

「当り前です。それより早く手を洗ってきてください。クッキー焼いたので」

「まじか。じゃあすぐ洗ってくる」

 

 ロングの銀髪を靡かせ、リビングに戻っていく花蓮に続いて家に入る。


 僕の妹は、本当の妹ではない。


 だからといって、義妹というわけでもない。


 僕の家庭関係は少し複雑というか、複雑にしている元凶がいる。


 それは父さんなんだけれど、父さんは海外を放浪している探検家と言えば良いのだろうか。


 ある日、突然家に帰ってきてこの子の面倒を見てくれと言われたときは、僕も母さんも流石に呆れたものだ。そういった本人はまたどこかへ行っちゃうし。


 母さんに、なんであんな奴と結婚したんだって何回も聞いたけれど、なんだかんだ嬉しそうに笑っているからこれでいいとも思える。


 手を洗って、うがいをしてリビングにある椅子に座る。


「いただきまーす」

「はい、召し上がれ。兄さんはココアで良いですよね?」

「アイスで」

「分かっています」

「いつもすまないねぇ」

「ほんとです」

 

 怒った感じを出しているけれど、毒を吐いてくるのはいつものやり取りなので別にそんなことはない。


「そういえば、今日......」


 話す話題がさっき丁度できたので、さっき起こった出来事を話す。


「……兄さん」

「何?」

「兄さんは、どうしてそう、危ないことに自ら首を突っ込むんですか」

「いや、今回は別にそこまで危なくないよ?」

「それに、楓先輩はいい噂を聞きませんし」

「いや、でも噂は噂なんだなって今日そう思ったよ」

「そうですか。…兄さんは、楓先輩の事をどう思ってるんですか?」

「うん?別に何とも。でも噂通りではない人だと思った。優しそうだったというか初心そうだったし」

「そうですか」


 そう言って、花蓮はしばらく考えて頷き僕の眼を見た。


「兄さん」

「なに?」

「私って可愛いですか?」

「そりゃ、可愛いだろ。どこをどう見ても」

「そうですよね」


 そこで、沈黙が訪れる。


 なにこれ?


「ということは、です。兄さんは私しか見れませんよね?」

「まぁ、花蓮以上に可愛い子は今のところ見たことないな」

「そうですか」


 うんうん、と頷いて「今のところは大丈夫か」とかそうぼそっと呟いた気がする。


「なにこれ?」

「兄さんはシスコンだなって思っただけです」

「急に罵倒」


 我が妹ながらよくわからない。


 たまにこういうことが前からあるけれど、どういうことなんだ。


 聞いても「兄さんは、ずっとそのままでいてください」そう言われるだけだし。


「美味しいですか?今日のクッキーは」

「いつも通り美味しいけれど」

「そうですか」


 そう言って、意味深に笑った。

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