もう恋なんてしない
―—という感情は皆が持ったことがあるのだと思う。だからこそこの曲が流行ったのだろう。
初めての彼は、考えられる限りの罵詈雑言をわたしに吐いて去って行った。確かにわたしにも落ち度はあった。彼が見ていた夢に、ついていくことができなかった。少しの否定もした。
でも、わたしは彼好みの、彼にふさわしい彼女になるために、少なからぬ努力をした。髪を伸ばした。苦手なネイルだってした。しっかりメイクだってした。彼のわがままもできるだけ聞いた。
それなのに、なのに。こんなことってあるの。
三日三晩、涙が枯れることはなかった。
あれからもう7年、わたしはそれなりの会社に就職をして、順調に出世街道を進んでいる。でも、恋愛はできていない。
あのときつけられた傷そのものはもう消えている。恋はしたい。だが、「次は自分がそうやって相手を傷つける側になるのかもしれない」と考えると、怖くなってしまう。
わたしに言い寄ってくれる人はいっぱいいた。会社の先輩、友達や親戚が紹介してくれた人。何回かデートをして、告白をしてくれた人だっていた。いい人だなと思っても、一定以上の関係になることができない。ここぞという場面で臆病な自分が出て、結果的にチャンスが逃げていく。
日曜日の夜、渋谷のスクランブル交差点。センター街へ向かうカップルとすれ違うように、一人駅に向かう。大学の先輩からのLINEの通知を消して、ひとり、山手線に消えることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます