物憂げな告白(ラブコメ)

 卒業式後の校舎裏。


 有紗はなにかを言いたげに駿一を見つめていた。


 そしてそんなふたりを影から見ている海斗。


 明らかにおかしな状況だが、一緒に来てくれと言ったのは駿一である。


 そう、これは駿一から有紗への告白だ。


 海斗は覗き見することに抵抗があったが、不安だから着いてきて欲しいという駿一のお願いを断れず、茂みに身を隠す。そして必死に耳を済ました。


 校舎横で向かい合う2人と、木陰で身を潜める海斗とでは距離が離れすぎてるが、かろうじて声が聞こえた。



「有紗、俺、有紗の事が好きなんだ。よければさ、付き合って欲しいんだけど……」



「──駿一……ありがとう、凄く嬉しい」



 会話の内容はいい感じだ。


 そもそも学年中から高嶺の花と呼ばれる有紗は、ほとんど呼び出しには応じない。その有紗が応じた時点で、駿一は勝利を確信しているはずだ。


 いっけんふたりは神妙な顔付きで向かい合っている。


 しかし親友である海斗にはわかる。駿一の表情は、明らかに浮かれている。しかし一方の有紗は物憂げな表情をしていた。


 その表情に、海斗は嫌な予感を拭いされなかった。


 暫くの沈黙の後、有紗がその紅唇を開き、紡いだ言葉。それは……。



「でも、ごめんなさい。あたし、海斗のことが……」



 爆弾だ。爆弾が投下された。


 一瞬、駿一と海斗の目が合う。


 海斗は全力で首を振った。



 ───俺は知らない! 初耳だ! 信じてくれ!



 海斗は心の底から声もなく叫んだ。


 駿一の表情が崩れる。


 それを見た海斗は泣きそうになった。



 ──有紗のアホォー!!!!!!



 卒業式の日、海斗は恋人を得て、親友と喧嘩した。


 つらい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る