佐藤くんは決められない(文芸)



 ようやく会議が終わりに近づいたころ、代表の佐藤が重い口を開いた。


 そこからとび出たのは、ああしたい、こうしたい、でもあれがこれで、それで……と不明瞭な言葉ばかり。そして、最終的にどうすればよいのか、という結論の段階で口を噤んだ。


 おいおい。というため息が部屋に広がる中、会議の司会をつとめる大崎も、誰にも気づかれないように心の中でため息をつく。


 佐藤が代表としてまとめようとしてくれていることはわかるのだが、最後の最後にあれこれと案を出したり反対したりされると、決まるものも決まらない。



 夕方5時の鐘がなる。


 いつのまにか、会議のメンバー全員が考えが定まらない状態になってしまっていた。


 佐藤のとつおいつ考える性格が影響した結果としか思えず、大崎はとうとうため息を吐き出した。


 代表なら代表として、もう少しうまくまとめてもらえないものだろうか。


 大崎は頬杖をついて時計を眺めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る