第333話 背中は任せる

「フォーリアさん。動けるのなら、一緒に戦ってください。僕が一人で戦うよりも二人で戦ったほうが、効率がいいです」


「で、でも。私、裸だし、こんな大量の敵に勝てる気しないよ……」


「危ない時は僕が守りますから、攻撃魔法を放ってゴブリン達を倒してください。これだけの数がいれば、少なからず敵に攻撃が当たるはずです」


「わ、私を守る……。それってプロポーズなの!」


 フォーリアさんは眼を丸くして大きな声を出す。


「いや……、フォーリア、絶対に違うでしょ……」


 ララさんは呆れた声で呟いた。


「じゃ、じゃあ。コルト君。私も手伝うから、お風呂に一緒に入ろうね……」


 フォーリアさんはもじもじしながらお願いしてくる。


「それくらい構いませんよ。戦い終わったあとお風呂にゆっくり浸かって、ホットワインでも飲みましょう。以前みたく飲み過ぎないよう、少しずつ」


「はわわ……。よ~し! どうせ見られてるんだからもう、どうでもいいや! コルト君とイチャイチャするために頑張るぞ~!」


 フォーリアさんが立ち上がろうとした瞬間、ララさんが手を掴み、立ち上がらせない。


「さ、さすがに全裸は駄目だから……、仕方なくこれを履いて。フォーリアなら入るでしょ」


「な! ご、ゴブリンの服を私に着ろ、だと……」


 ララさんは死体のゴブリンから衣服を剥ぎ取り、フォーリアさんに渡した。フォーリアさんは嫌々受け取り、脚を通してみる。すると、お尻が突っかかって入らなかった。


 さすがにゴブリンと比べたらフォーリアさんの小ぶりなお尻でも大きめになるらしい。


 ララさんはププッと笑い、フォーリアさんは赤面する。もう、無理やり履いてやると言わんばかりにホットパンツを引っ張り、お尻がパツパツになりながら履いていた。


 小さなホットパンツからフォーリアさんの可愛らしい下尻が見えてしまっている。


 長い布を見つけたララさんがフォーリアさんに渡し、フォーリアさんは布を胸に巻き付けて胸当てとして使っていた。


「フォーリアがゴブリンの衣装を着るなんて新鮮~。こんなにかわいいゴブリンだったら皆、虜になっちゃうよ~」


「ら、ララ……、今、どういう状況だかわかってるの……。もう、絶命の危機なんだよ。そんなのんきな発言している場合じゃない。ララも起きて戦って!」


「わ、私は……。ほらぁ、おっぱいが大きいし、お尻も大きい……ゴブリンの服は着れないからちょっと無理かな……」


 ララさんは両手で胸を隠し、苦笑いをする。


 フォーリアさんは体から魔力があふれ出るほど怒っていた。その力を魔法の力へと変えようとしているのか、呪文を唱え始める。


「水の聖霊よ、大地を荒らし、水源を犯す主要の根源に怒りの鉄槌を放て。ウォーターショット!」


 空間に魔法陣が何枚も出現し青色に光り輝くと眼にもとまらぬ速さで水が打ち出された。ゴブリンの額に当たった水は脳天を貫通し、瞬殺する。


『ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!』


 魔法陣からは無数の水滴が発射され、僕の後方にいるゴブリン達を一掃していく。魔法の威力はすさまじく、ゴブリンが猛攻出来ないほど押されていた。


 水滴はゴブリンの頭に当たらずとも体に当たれば貫通するため、威力は申し分ない。


 僕の体を傷つけた魔法の威力は健在で、方向に加え命中率も安定しており、フォーリアさんは魔法の鍛錬を相当したのだと分かる。


 服装は少々いびつだが、魔法使いと言って過言はない。欲を言えば魔女帽子をかぶっていればもっと魔法使いっぽかったかな……。


「おらおらおらおらおらおらおら! 私に滅茶苦茶恥ずかしい思いさせやがって! 絶対に許さないからなああ˝!」


 フォーリアさんが叫ぶとウォーターショットの威力が増し、速度も上がった。


「はは……。フォーリアさん、凄くカッコいいです。これぞ冒険者の魔法使いって感じがします! 後姿が何か凛々しいです!」


 僕は冒険者愛好家なのでフォーリアさんが生で敵と戦っている姿を見て興奮していた。


「こ、コルト君、あ、あんまりジロジロ見ないでぇ……。今、わ、私はすご~く恥ずかしいからぁ……」


「あ、そうでしたね。すみません。じゃあ、フォーリアさん、僕の背中は任せます。僕は目の前にいるゴブリンとゴブリンロードを倒しますから、フォーリアさんも前にいるゴブリン達にだけ意識してください」


「わ、わかった! コルト君の方にゴブリンは一体も行かせない!」


 僕とフォーリアさんはアイコンタクト(視線を合わせること)をして頷き、前に集中した。


「何だ……。生贄が眼を覚ましたのか。魔法が効きにくい者がいたようだな……。あの子共のような雌か……。こざかしい。ウィッチ! こちらも魔法で対抗せよ!」


「ギャギャギャ! ギャギャギャ!」


 僕の目の前には一体でも十分珍しいウィッチゴブリンが一〇体以上控えており、木製の杖を持って僕の方に向けている。


「ギャギャギャ! ギャギャギャ!」


「くっ!」


 ウィッチゴブリンは普通のゴブリン達を顧みず、魔法を打ち込んできた。火、水、風、土、雷の基本属性魔法から氷、毒、と言った一つの魔法では不可能な性質を打ち込んでくる。


 賢いウィッチゴブリンが一〇体以上も合わされば話し合い、更なる知識を着けてしまっていると考える。僕は魔法が使えないので無理やり突破するしかない。

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