第334話 分担させられた
僕はポロトの剣の柄を握り、ウィッチゴブリンの放つ巨大な魔法攻撃を切り裂いていく。
すべて剣を振った時に起こる風圧で相殺していると言ったほうが正しい気もするが、今のところ全ての魔法を相殺できている。逆に、ウィッチゴブリンの魔法が多くのゴブリン達を巻き込み、倒してくれているので僕に貢献しているとさえ思ってしまうくらいだ。
今回のゴブリンロードは前のゴブリンロードよりも頭が悪い。きっと真面な教育を受けてこなかったのだろう。父親から教えてもらうはずだった知識ではなく、自分の中にある憎しみを利用してここまで数を増やしたのはすごいと思う。
でも、心が無いのか部下の命を何とも思っていない。自分さえ生き残ればいいと言う考えをしているようだ。
魔物は自分より格上の者に逆らえないので自ら僕に飛び込んでくる。表情はゴブリンのままで恐怖心を覚えるのだが、彼らも手足が震えているようにも見える。
一斉攻撃をしても無駄だと言うのに、上に立つ者が愚かなせいで無駄に兵士(ゴブリン)が死んでいる。まるで今の世の中を体現しているかのようだ。
「ギャギャギャギャ! ギャギャギャギャ!」
「メテオスラッシュ!」
僕はポロトの剣を横一閃になぎ払う。天井が落ちてこないよう細心の注意を払って放った。僕が放った斬撃はゴブリン達の体を一刀両断し、大量の死体が生まれる。
その後も何度かメテオスラッシュを放ち、ゴブリンの大群を一気に殲滅しにかかる。すると……。
『ギャギャギャ、ギャギャギャ、ギャギャギャ……』
ウィッチゴブリン達は協力し、魔法を詠唱し始めた。
『ギャギャギャギャギャ!』
数秒で詠唱を終えると、ウィッチゴブリンは僕に何とか攻撃を当てようと数体で協力し、大きめの魔法を放ってくる。
「大きいな……。切れるだろうか」
火球と水球、雷球が飛んでくる。僕のもとに来る間に三種類が合わさり、巨大な玉と成る。水が雷によって分解され火によって熱されていた。
見るからに危険な攻撃に、僕はポロトの剣を振りかざした。
「はあっ!」『メテオスラッシュ』
『ズシャッツ!』
『ボガンンンンッツ!』
斬撃が巨大な玉に当たると大爆発を起こし、爆風で僕の髪が靡き、複数のゴブリン達が弾け飛ぶ。真面に食らったらただでは済まないと分かり、要注意の攻撃だと頭に叩き込む。
「そんなに前に出てきてもいいのか……。後ろにも敵はいるんだぞ……」
ゴブリンロードはニタニタと笑い、僕の位置を指摘した。
「なに……。な、いつの間にこんな前に……」
僕は自分から前に飛び出しすぎていたらしく、フォーリアさん達と距離が開いてしまっていた。巨大な攻撃に注意を張り過ぎてしまったらしい。
――すぐに戻らなければ。
僕は魔法を放っているフォーリアさんのもとに急いで駆けつける。
『ギャギャギャ!』
一体のウィッチゴブリンが詠唱を放つ。
「ズシャズシャズシャッツ!」
地面が変形し、鋭い杭が飛び出してきた。
「くっ!」
ウィッチゴブリンは地面から鋭い杭を出現させた。そのせいで僕の脚は止められてしまった。
僕はポロトの剣を振り払い、杭を切り裂くもすぐに出現してしまう。
フォーリアさん達の方向からゴブリンが迫っているのに、僕が距離を取ってしまったせいで離ればなれにされてしまった。
――このままだとフォーリアさんの身が危険だ。どうにかしてゴブリン達の行動を阻まないと。今、別れさせられているのはとても危険だ。何が起こるか分からない。
僕は早く移動したくて仕方がないのに周りに大量のゴブリンがいるせいで移動できない。
僕の方に大量に集めているようだ。フォーリアさんの魔力量が多いとはいえ魔法を放ち続けることは不可能だ。僕だって剣を振り続けることなんて不可能なのに……。
「ほら……。どうした……。もう一方の人間たちと分担されてしまったぞ。このままだと確実に数に押し込まれて負けてしまうかもしれないな……」
ゴブリンロードは僕の心を揺さぶってくる。きっと感情を起伏させ、欠点をついてくる作戦だと思うがその程度で僕が気を紛らわすと考えられているようだ。
僕は辺りのゴブリン達を倒し始める。先ほどよりも剣を早く動かし、出来うる限りの駆除を行っていき。ゴブリンロードを追い詰めていく。
――ゴブリンの数を少しでも減らしてフォーリアさん達のもとに向かわないと、四人が危険にさらされてしまう。いや、もう十分危険なんだけど……。
「ギャギャギャギャ!」
下っ端のゴブリン達が大量の一斉攻撃をしてくる。
「はああっ!」
僕はポロトの剣を振り払い、横にいるゴブリン達を倒していく。杭の地面を回り込んでフォーリアさん達のもとに向う予定だ。
「ギャギャギャギャ!」
ウィッチゴブリンがまたもや詠唱を放つ。
「くっ……。地面からここまで大きな杭をいくつも出現させているのに移動させられるのか……」
杭が飛び出している地面は僕の移動と共に移動していた。と言うのも、杭が元に戻り、僕の行く手を阻むため、再度別の場所に杭が出現すると言った感じだ。
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