第326話 キセキ村がまたしても襲われている
「コルトさん、マリリです。今、キセキ村が大量の魔物に襲われています」
「え……、マリリさん」
「緊急要請した冒険者さんは大雪のせいで到着するのが遅れてしまうそうです。今は以前に派遣されてきた冒険者さん達が頑張っていますが、怪我人が増えるばかりで鎮静化の目途が立ちません」
「そんな……」
「支給応援をお願いします。このままだと、村人がまたしても殺されてしまいます」
「マリリさんからの手紙……。キセキ村がまた襲われているのか。でも今はブレーメンさん達を探さないといけないのに……」
「今、キセキ村を襲っている魔物がゴブリンなら、追跡してゴブリンの巣を見つけられるかもしれませんよ」
モモは僕に助言してきた。
「今はどこにいるかわからないブレーメンさん達よりも、襲われているキセキ村の人達を助ける方が、効率がいいと思います」
「た、確かにそうだね。よし、キセキ村の方に行こう。少し前まで全く魔物が現れなかったと言っていたのに……。その原因を突き止める。モモ、移動中にロミアさんのにおいがしたら、知らせて」
「了解です!」
僕とモモは全速力でキセキ村へと向かった。
叫び声や泣き声が暗い夜の森にも届くほど、キセキ村が魔物に襲われていた。
以前よりも遥かに多くの魔物が現れ、その種戦力はゴブリン達だった。
僕の想定していた位置よりも遠くに巣を作っていたのかもしれない。
キセキ村に入ると大量の魔物が蔓延っており、冒険者らしき人が応戦しているが、倒しても倒しても敵数が減っていないようだ。
除雪された雪が黒や赤の血に染まり、熱によって溶けている。
「モモ、僕が魔物たちの数を減らしてくる。モモは怪我人をウルフィリアギルドの支部に運んで」
「わかりました」
モモは飛び出し、キセキ村の柵を飛び越えて中に入って行った。
僕はキセキ村に入る前に周りに蔓延る魔物たちを倒しにかかる。
「魔物はほぼゴブリンか。この数は異常だな。一〇○○体以上はいる。あとはミノタウロスとウォーウルフ。オークなんかもいるのか……。これだけの数、いったいどこに隠れていたんだ」
僕は左腰に掛けられているポロトの剣の鞘を握り、すっと抜き出す。
月明かりに照らされた剣身は銀色の輝きを放っていた。あまりにも頼もしい。
僕は崖を飛び降り、キセキ村の北西側の外周りに移動する。
キセキ村を上の方から見た時、北西の方に魔物が多かったのだ。
北西の位置に移動すると、目の前から大量の魔物が迫ってくる。積雪などお構いなしに、もの凄い力で押し寄せてくる。
まるで魔物の雪崩のようだった。
「ふぅ。今まで倒し損ねてきた分、しかと屠ってやる。森の中で静かにしていればよかったのに」
僕は魔物に視線を向けながら、どのように倒していくか考える。
「こんなに押し寄せてくるおかげで倒さないといけなくなった。ほんとうに僕はよく大群と戦うよな。仲間がいればいいんだけど、今は僕一人。毎回思うけど、寂しいな」
そんな時、月明かりが『ポロトの剣』の剣身に反射し、僕の眼に入る。
「そうか、確かに君は僕と一緒にいてくれるよね。ありがとう。じゃあ、行こうか」
僕は『ポロトの剣』を構えて、一呼吸置いてから走り出した。
「ギャギャギャ!」
前方のゴブリンが吠えると他のゴブリン達は一斉に広がり、弓や石、槍などを投げ込んできた。
投擲は無数にあり、視界が遮られそうになる。もう、武器の雨のようだ。
僕は武器が降り注いでくる前に敵陣に乗り込み、ゴブリン達の首を切っていく。数を減らせば減らすだけ戦いやすくなるはずだ。
「『メテオスラッシュ』」
僕が『ポロトの剣』を横一閃に切り払うと、衝撃波が生まれ、ゴブリン達の首が二○体程度飛ぶ。少々力を籠め過ぎたのか、地面まで切り裂いてしまった。
――なぜこのゴブリン達はキセキ村を襲うんだ。他の場所にも村はあるのに……。
僕はゴブリン達を着実に倒していった。だが、一向に数は減らない。でも、キセキ村への進行は食い止められていた。
僕が到着してから、キセキ村からの悲鳴が消え、数名の冒険者が僕の方へとやってきた。その中にマリリさんも混ざっており、杖を持ちながらブルブル震えている。
「こ、コルトさん! 来てくれてありがとうございます! 私達も手伝います!」
マリリさんは僕の方に向って大声で感謝してきた。
他の冒険者たちはゴブリン達の駆除を行い始める。マリリさんは魔法を使い、氷の槍を作製してゴブリンの頭上から落とし、倒していく。
気温が低いお陰で冷却させる時間が短く、生み出した水が瞬時に氷になり、雨の如く降り注いでいく。
人が増えると一気に戦い安くなった。
ゴブリン達の勢いはマリリさんの広範囲攻撃によって弱まる。だが、マリリさんのMP(マジックポイント)が減ると、魔法が放てなくなり押され返す。
マリリさんはMPポーションを飲んでMPを回復させると、魔法をすぐに放ってゴブリン達を倒した。
僕はゴブリンではなく、上位魔物のミノタウロスに狙いを定め、討伐しに行く。
ミノタウロスはジャイアントベアと並ぶBランクの魔物だ。二足歩行で頭は牛、頭部からは大きく赤黒い角が二本生えている。体はオークのように大きく筋骨隆々だ。全体的に黒く、大きな石斧を持っており、一撃でもくらえば一たまりもない。
他の冒険者も手が出せず、しり込みしているようだったので、僕が倒せばいいと思ったのだ。
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