第323話 コロネちゃんの魔法
除雪作業をしているとレイトは痩せ、イケメンに戻っていた。だが同時に疲れ果てていた。その為、ばたりと倒れ、僕が家まで運ぶ羽目となる。
僕達は家の密集している箇所の除雪は終わった。続いて離れている家の周りの除雪作業に取り掛かる。屋根に乗った雪を下ろし、玄関の扉を開けて外に出られるように除雪する。
ポロトの剣で雪を切り裂くと塊状になって取れるので入れ物に入れて運びやすい。人の上に落ちてきたら窒息死してしまうほど重い雪が屋根に積もっていたら家が潰れるのも無理はない。
僕たちはお年寄りのいる家を優先して訪問し、除雪を行っていく。ほぼ全てやり終え、密集地から外れた場所にある、仕立て屋さんにやってきた。
すると、カロルさんが一生懸命除雪しており、コロネちゃんは雪の壁に魔法を打ち込んで練習していた。
「カロルさん。手伝いに来ました」
「あ、コルトさん。すみません、こんな大雪になるとは知りませんでした」
「いえ、僕達も初めてですよ。雪は多少降りますけど、ここまで降った覚えはありません。異常気象です」
「そうなんですか。いやぁ~、除雪機を作ろうにも素材や部品がないので無理なんですよ。この大雪で注文しても届くのは遅くなりそうですし」
「除雪機……。何ですかそれ?」
「除雪機って言うのはですね、連邦の方でよく使われている器具なんですが、魔石の力で雪をどけられる道具です。実物があればお見せできるんですけど手持ちがないので見せられません」
「そうですか。なら、手動で除雪するしかありませんね。じゃあ、僕達も除雪作業を手伝いますので、少し休憩していてください」
「分かりました。お言葉に甘えさせてもらいます。もう、腰がきつくって……」
カロルさんは腰に手を置き、ぐぐ~っと背を反らす。
「あ、コルトさん。見ててください。新しい魔法を頑張って覚えたんですよ」
コロネちゃんは杖を雪壁に向け、火の玉を放った。可愛らしいなと思っていたら、火の玉が雪の壁に当たるすると、ズンズンと入って行いく。
「『インフレーター』」
『ボウッツ!』
コロネちゃんが声をあげると雪の中から、巨大な火が現れ、雪を溶かした。
「凄い……。まさか、こんな魔法まで使えるなんてさすがだよ」
「えへへ~。そうですか~。褒めてくれてありがとうございます。私、もっといっぱい炎を出して雪を溶かしちゃいますね」
コロネちゃんは小さな火をいくつも出し、雪壁に入って行く。
「『インフレーター!』」
『ボウッツ、ボウッツ、ボウッツ、ボウッツ、ボウッツ!』
雪壁から炎が出てきてとても熱い。雪は解けて水となり、地面に浸透していく。子供達は闘争心を燃やし、除雪していく。少しするとお店の周りが除雪されており、人が入りやすくなった。
「いやぁ、ありがとうございました。まさかコロネがこんなに魔法が得意になっているとは思わなかったです」
「練習の賜物ですね。ぜひこのまま、長所を伸ばしてあげてください。そうすればコロネちゃんはどこまでも伸びると思います。コロネちゃん、もっと楽しんで良いからね」
「はい! 私、もっと楽しみます!」
子供達はコロネちゃんと一緒に遊び、僕とモモ、ナロ君は除雪を再開する。
除雪は昼過ぎまで続き、カロルさん達の計らいで食事を一緒に取った。
コロネちゃんはなぜか僕の横に座り、くっ付いてくる。それを見てモモやミル、マル、エナは我先にと僕にくっ付いていく。
だが、カロルさんとナロ君の二人で作った肉料理を見るとそっちへと一気に気が移り、美味しそうに食べ始めた。
そこまでお腹が空いていたのかと思い、少々驚く。
なぜこれほど肉があるのかと聞いたら、ジャイアントボワの素材を購入するときに加工費が取られるから素材そのもので買ったほうが安くなるのだという。
魔物の素材の場合、肉があまり、人気がないので素材と別料金にならないんだとか。
エナ達は魔物の肉なんてお構いなしなのでバクバク食べていく。
もう、気持がいいくらいに食べ物がなくなっていく。
テーブルの上に置いてあった食べ物は全てなくなり、満腹になったのか皆は嬉しそうな表情を浮かべていた。
肉をたらふく食べられるというのは皆にとって至福なのだと思う。
ただ、僕はミルが肉を食べる量を制限した。以前のバーベキューの時、ミルは食べ過ぎて吐き戻してしまったのだ。自分の限界量以上を食べないように体調を鑑みて定めて行った。
「モグモグ……。モグモグ……。うっぷ……。うぅ……。もっと食べたいけど、これ以上食べたらまた出ちゃいそう……」
「なら、そこまでにしておこう。食べ過ぎるのはよくないよ」
「でも……。まだ、皿にいっぱい残ってる……」
ミルは他の子供達と同じ量を更に取り分けており、皆は食べ終わっているのだが、ミルだけはまだ食べ終わっていない。
「残っているお肉は他の子共たちに食べてもらえばいいよ。ミルが無理して食べる必要はない。食事は美味しく取らないと意味ないんだよ。無理やり食べても美味しくないでしょ」
「う、うん……。美味しくない……。でも、主様と一緒に食べたら美味しかった……」
「そう、よかった。じゃあ、この肉はモモに食べてもらおうか」
「うん……」
僕は肉の乗った皿をモモのもとに持っていく。
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