第284話 手のかかる親友

レイトの発言が気になった僕は質問した。


「筋肉の話だよね?」


「ち○ち○の話だよ! お前、分かって言っているだろ!」


「何でそんなに怒ってるの……。別に気にしなくてよくない。ここが大きいからって何かあるの?」


「別に何もねえけどよ……。なんかあるだろ、ほら、男らしさとか、大きいものは小さいものを兼ねるって言うじゃねえか」


「僕のそんなに大きくないでしょ。レイトのは小さくて可愛いじゃん。それでよくない?」


「バカにしてるのかごらっ!! 『ウォーターボール』」


「うわっ! 家の中で魔法使うなよ! 壁に穴が開いてしまうだろ!」


 レイトの放った魔法は僕の拳で防いだ。


「うるせえっ! 自分がどれだけ凄いかも知らないで他人を評価してるんじゃねえぞ!」


「な、何で怒るんだよ! そこを可愛いって言っただけだろ。僕の方は怖いって感じじゃないか。怖いより、可愛いの方がよくない?」


「よくねえよ! 『ウォーターボール』」


 レイトはまたしても魔法を放ってきた。


 僕は手刀で叩き落とし、被害を最小限に抑える。


 僕とレイトの小競り合いは続き、レイトの魔力が切れたところで終わった。


 レイトはお風呂のお湯に死んだように浮かんでおり、僕が引き上げる。


「はぁ……。魔力の使い過ぎで気絶するなよ。全く、面倒ばかりかける親友だな……」


 僕はレイトを脱衣所に運び、木製の長椅子に寝ころばせて体を拭く。


 僕の寝間着を着せて一階の客室にあるベッドに寝かせた。


 レイトの介護を行うなんてまっぴらごめんだが、いつか自分もこういう日が来るのかもなと思うとやるせない。


 僕は子供達の眠る寝室に向かい、扉を開けた。


「あらまぁ……。ぐっちゃぐちゃ……」


 子供達の寝相が悪すぎてベッド周りが荒れ放題だった。


 エナは僕の枕を抱きかかえながら床で寝ており、マルはシーツにくるまってベッドの上で眠っている。


 ミルは日記帳を抱きしめながら椅子の上で眠り、パーズはピシッと真っ直ぐになって眠っていた。ハオはお尻を丸出しにして床で眠っている。


 モモの姿はなく、屋敷の別の場所にいるみたいだ。トイレにでも行っているのかもしれない。


 僕は子供達をベッドに集めた。


「あるじぃ……。ちゅっちゅ……」


 エナは寝ぼけており、僕の枕にキスしていた。愛らしい姿を見て頭を撫でる。夢の中で絵本のキスシーンでも思い出して真似しているのかもしれない。


「エナ、それは残念ながら僕じゃないんだ」


 僕は子供達を集めたあと、開いている場所に寝ころび、眼を閉じた。


 次の日、朝目覚めると僕の体に子供達が集まっていた。加えてモモも僕に抱き着いている。睡眠の必要はないと言っても、夜中に子供達が乗っていたら疲れてしまうのは必然だ。


 僕は子供達を起こさないよう注意してベッドから降りる。


「ふぅ……。さてと、鍛錬に行きますか」


 時計を見ると午前四時を過ぎたころだった。外は未だに暗く、朝日は出ていない。


 僕は壁に掛けてあるポロトの剣を手に取り、寝間着から運動着に着替えて玄関に向かった。


「ふわぁ~~。あるじぃ、エナもトイレ……」


「……エナ、師匠はトイレに行くんじゃないよ……」


 僕の後ろについてくる子が二人、トイレに起きたエナと鍛錬についてきたパーズだ。


 僕はエナをトイレに連れていく。


 お漏らしせず、ちゃんと起きてこれるのは偉いと思うが寝ぼけているのはやはり子供っぽい。


「ふぅ~! すっきりした! あれ? 主、パーズ。エナは何でここにいるの?」


「エナがトイレに行きたいと言って起きたんだよ。だから連れてきたんだよ」


「あぁ、そうだったっけ。エナ、覚えてない。ふっしぎ~」


 エナは笑いながら尻尾を振っていた。きっとエナにとってはどうでもいい話なのだろう。


「じゃあ、エナ。寝たかったら寝室に戻ってベッドの上で眠るんだよ」


「今はもう、眠たくないから起きて主と鍛錬する~」


 エナは僕の足下に駆け寄ってきた。


「分かった。じゃあ、三人で鍛錬しようか」


「はーい」×パーズ、エナ。


 二人は手を上げ返事をした。


 パーズは運動着に着替えていたがエナは寝間着のままだったので、部屋に一度戻り、運動着に着替えさせてから庭に向った。


 僕達は水を飲み、水分補給してから運動を始める。


 準備体操をして屋敷からブレーブ村の敷地まで走り、村を一周して屋敷に帰ってくる。僕の足なら一〇分も掛からず終わるのだがエナとパーズに合わせる必要がある為、三〇分ほどかけて三人と一緒に走った。


 子供達は走るのが大好きだ。特にエナはずっと走っていたいと思うくらいに走るのが好きらしい。僕も昔はよく走って遊んだと思いながらエナと共に走っている。

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