第282話 知能指数が三

 僕はレイトを縛り、天井からつるしていた。


「うぅ、許してくれコルト……。腹が減って死にそうだ……」


「性欲の豚に食わせる飯はないよ……、レイト」


「う、うぅぅ……。すみません、あまりにも可愛かったからつい」


「そんなふうにほいほいついて行ったから大金貨一枚をだまし取られたの分かってる?」


「わ、分かってます。分かっているつもりです」


「分かっていて、何でまた同じような過ちを犯そうとするかな?」


 レイトが脱衣所に忍び込み、風呂場を覗いているところを僕が拘束したのだ。まさか芋虫のように移動してまでのぞき見をするとは思わなかった。お風呂に入っていたのがナロ君だったのが幸いだが犯罪は犯罪。ただいま、吊るしの刑に処している。


「うぅ、頭に血が上ってきた……。これ以上このままだと、口から内臓が出ちまうゥ……」


「口から内臓は出ないよ。出るのは胃液だけだ」


「そういう問題じゃねえぇ。早く下ろしてくれぇ」


「もうしないと誓える?」


「誓う、誓うから」


「もし約束を破ったら、レイトのお○ん○ん、ぶった切るからね」


「じょ、冗談だよな……」


 僕は『ポロトの剣』を引き抜き、レイトの少し長い髪を整えるように何度も切り掛かった。


「ぎゃあああっ!」


「動くと耳が切れるよ。顔も削がれたくなかったらじっとしてないと」


 僕はレイトの髪を整え『ポロトの剣』を鞘にしまう。


「し、死ぬかと思った……。何するんだよ! 死んだかと思ったじゃねえか! うわっ!」


『ドサッツ』


 レイトの体を縛っていた紐も同時に切り、レイトは三メートルほどの位置から床に叩きつけられて落ちた。


「痛た……。おい、俺が頑丈じゃなかったら死んでる高さだぞ」


「レイトなら問題ないと思っただけだよ」


「そうだろうけど……。だとしても怒り過ぎだろ」


「じゃあ、もしレイトに娘がいるとして、お風呂に入っているとする。その時、僕がレイトの娘を覗いても、レイトは怒らないんだね?」


「怒るに決まってるだろ! あ……」


「はぁ、そういうことだよ。もし、レイトに娘が出来た時のことを考えて行動してみてよ。覗きをするようなお父さんが好かれると思う?」


「ないな……」


 レイトは分かってくれたのか、少し落ち込んだあと潔く飯抜きを選択した。


 僕はレイトを起こし、何か着れる服を探したがレイトの体に合った服がなかった。


 レイトが着ると服がピチピチになってしまい、ぬいぐるみが服を着ているような状態になっていた。どうやらレイトは結構太っているらしい。


「レイト、今の今までどうやって生活してたの?」


「俺の有り金を使って生活してたんだが……昨日、ついにそこを突いてしまったんだ。ギルドにお願いしてもう、帰ろうと思っていた矢先、別嬪さんに捕まっちまったわけよ」


「ほんと意思が豆腐くらい柔らかいんだから……。今度何かしたら、分かってるよね。おしっこを一生しゃがんでする羽目になるから、気を付けてよ」


「うわぁ、めっちゃヒュンってした……。さすがの俺でもこれだけ釘を刺されたらさすがにやらないぜ。はぁ、俺の奥さんはいったいどこにいるのやら……。妻を探す旅にでもでるか」


「いや、探しても分からないでしょ。でも実際どうやって恋仲になるんだろうね」


「さぁ……。それを知っていたらこんな苦労してないっつーの。学園にでも行けば一人や二人くらい俺を好いてくれる人がいるかもしれないけどな」


「レイトは学園に行かないの?」


「いまさら行っても遅いだろ。そもそもそんな金がない。行ったとしても貴族ばかりでいじめられるのが眼に見えているぜ」


「でも、行動を起こさないと何も始まらないよ」


「今回は行動して大失敗に終わった……。金をむしり取られ、借金を背負う羽目になった……」


「ツボを売ればいいんじゃない?」


「…………その手があったか。だが、あれはなぁ」


 レイトはどうしてもツボを手放したくないみたいだ。お金が無いのに商品だけを仕入れても意味がないと思うのだが、保持していたいという気持ちが強いのかなかなか決められそうになかった。


「はぁ、それじゃあレイト、一緒にお風呂にでも入る?」


「いいのか、俺が入っても」


「別に男同士なんだからいいでしょ。もしかして男や子供にも欲情するのか……」


「浴場で欲情……、なんつって……」


「笑えないよ」


「安心しろ。男や子供に欲情するなんて一〇○パーセントあり得ない。俺は大人の女性が好みなんだ。子供っぽいのは範囲外だ。もちろん男な」


「まぁ、男には欲情しないってわかるけど、好みの違いって何?」


「は?」


「女の人にもいっぱいいるでしょ。全員に欲情するの?」


「するわけねえだろ。不細工には興味ねえよ。貧乳にもな。あとロリっ子も無理だ」


「レイトが最低なのは分かったけど……。好きに違いがあるってことでいいんだよね」


「まぁな。俺は美人で巨乳を持っていてくびれはあるのにムチムチなお姉さんが大好きだ」


「凄い限定的だけど、それに近ければ欲情すると……」


「そうだな。確かに条件に近ければ欲情するんだろうな……」


「へぇ、僕、欲情した経験がないからよく分かんないけど、性欲って男をこんなに馬鹿にしちゃうんだね」


「確かにな。俺なんて別嬪さんに捕まった時の頭の中は胸と尻しかなかったと思うぜ。もう、知能指数は三くらいだったな。赤子くらい馬鹿になってた」


「そりゃあ、禁止されるよな……」

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