第279話 騙された親友
「少し話をお聞きしますが、あなたは僕の友人であらせられるレイト・ブレーブ君ですか?」
「は……、俺に友達はいない。いるのはコルト・マグノリアスって言う親友だけだ……」
「はぁ、レイトも僕と一緒だね。親友が一人しかいないなんて可哀そうに。それで何でこうなっているのか簡単に説明できる?」
「可愛い人について行ったら金をむしり取られた……」
「ほんと何やってるんだか……。いくら取られたの? もしかして、僕の渡した中金貨一○枚を使ったわけじゃあるまいね?」
「そ、それは……。ご想像にお任せします」
「レイトが女遊びしている間にレイトのお父さんが死にかけていたんだよ」
「なっ! と、父さんに何があったんだ!」
レイトは地面に額をずっと着けていたのだがレイトのお父さんが瀕死状態になっていたと聞き、面をぐわっと上げる。
レイトでもお父さんの心配は出来るみたいだ。
「ブレーブ村の反対にあるキセキ村でゴブリンの襲撃にあって怪我をしていたんだ。一命はとりとめたから安心して」
「そ、そうなのか……」
「でも、そうか……。あれだけ用心してと言っておいたのにまんまと罠にはまるなんて。情けないね」
「返す言葉もございません」
「中金貨一○枚分は支払い終わっているということは、残り大金貨四枚分ってことか。レイト、金利を一パーセントで貸してあげる。毎月一定額返してくれるのなら僕が払うよ」
「わ、分かった。借りるあてもないし、あったとしてもそんな低金利で借りれる場所は絶対にない。コルト、俺に大金貨四枚貸してくれ」
「ちょっと違うな。大金貨五枚でしょ。僕の渡したお金を使って飲み食いしたんだからさ。あと、お金はちゃんと返さないと一生豚小屋の掃除をさせるからね」
「わ、分かった……。大金貨五枚貸してくれ」
レイトは地面にひたいを着けてお願いしてきた。
「はぁ、仕方ないなぁ。分かった。助けてあげるよ。この街に来させたのは僕でもあるんだし、少なからず罪悪感を持ってしまった。今は手持ちがないからウルフィリアギルドで金貨をおろしてくるよ」
「かたじけない……」
僕は膝立ちの状態から立ち上がり、周りにいる強面の男性たちに話しかける。
「僕の友達が迷惑をおかけしました。お金はすぐに支払いますから少し待っていてください」
「ほんとにあんちゃんが払うのか。と言うか、そんな大金を持っているのかよ」
「今、ウルフィリアギルドから金貨を下してきます。ですから待っていてください」
「ちっ、早くしろよ。こっちも忙しいんだ」
「分かりました」
僕はウルフィリアギルドの中に入って行く冒険者さん達や一般の人たちが多く、お金のやり取りや仕事探しなどで盛況していた。
僕は列に並んで待つ。数分後に僕の番がやってきた。
「すみません。ギルドカードから金貨を下したいんですけどいいですか?」
「構いませんよ。いくら下しましょうか?」
「大金貨四枚と中金貨十枚お願いします」
「分かりました。では、ギルドカードを提示していただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
僕は自分のギルドカードを受付さんに渡した。
「ありがとうございます。調べさせていただきますね」
受付さんは僕のギルドカードをスキルボードにかざし、浮き上がる長方形の独立した表示領域(ウインドー)を見て眼を見開いていた。
僕の顔とウインドーを三度見くらいしたあと、平常心を取り戻したらしく、一呼吸おいてから僕に話掛けてきた。
「ただいま確認した所、提示金額を下すことが可能だったので、今、持ってきますね」
「お願いします」
受付さんは椅子から立ち上がり、ギルドの奥へと歩いて行った。
数分後、黒い板に大金貨四枚と中金貨十枚を乗せて受付さんが戻ってきた。
「こちらの金額でお間違いないでしょうか?」
「はい、間違いありません」
「では、ギルドカードと現金の方をお返しします」
「ありがとうございます」
僕は小袋に受け取った金貨を入れ、ギルドカードは服の内ポケットにしまう。
「あの、コルト・マグノリアスさんは『ポロトの剣』の方ですよね?」
「え? 何で知っているんですか」
「いや、最近話題に上がっていたので」
「話題……。何があったんでしょうか?」
「今月、新米冒険者の中で稼いだ金額が最も多かったんですよ」
「そうなんですか? 知らなかった……」
「コルトさんも『ポロトの剣』のメンバーですよね。と言うか、リーダーさんですよね。それなのに、知らないって……」
――ど、どうしよう。今僕達がやっているのは犯罪紛いな行為だ。実際は奴隷だけで仕事をさせてはいけないと言う規則がある。王都の方はウルフィリアさんがいるから特別に見逃してくれているかもしれないけど、他の支部で犯罪と認定されたら普通に捕まってしまう。
「あ、いや、その……。僕はお金に興味があまりなくて全然気にしていませんでした」
「そうなんですか……。いや、すみませんでした。疑いの目で見てしまいました」
受付さんは僕に頭を下げてくれた。相手の方もあまり深堀しない方がいいと悟ったのかもしれない。
僕は変な汗を掻きながらウルフィリアギルドの支部を出た。
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