第273話 獣人族は熱い感情を持っている
「ナロ君にも色々あったんだね……」
僕は大量の教科書をナロ君から受け取り、店員さんのもとに持っていく。
店員さんはもちろん驚いており、こんなに購入される人は初めてだと言われた。少し恥ずかしい。
料金は大金貨一枚。どうやら百冊以上購入したみたいだ。
まぁ、子供達に教養を着けられるのなら安い出費だ。何ならもっと出してもいい。そう思えるほど、僕は大単に行動できる。だが、僕はあまり目立ちたくなかったので、さっと大金貨を出して購入した。
店員さんは木箱に教科書を詰めていき、持ち運びやすいようにしてくれた。
「お買い上げ、ありがとうございました」
「あ、ありがとうございました」
僕は軽く会釈をして、その場を離れる。
ナロ君はハオとパーズの手を握っているので木箱を持てない。エナをナロ君に預けて重い荷物を荷台に置いて来ようと思ったのだがエナは僕の背中にくっ付いており、頑なに離れない。
僕は馬車を置いた駐車場にまで仕方なくエナと共に戻り、荷台に重い教科書を乗せておく。
持ち逃げされる可能性があったが普通の人がもてる重さじゃないのと、止めた場所の周りには兵士がいて他の人たちが止めている馬車の荷物を守っていた。
街の治安はいい方だが、少なからず悪人はいるらしく、兵士や冒険者が巡回しているんだとか。
僕は兵士の方に金貨一枚を渡し、なるべくその場にとどまってもらうようお願いした。だが、そう言うのはいりませんよと言って兵士はお金を拒否した。王都とは違い、皆、助け合いの精神で生活しているという。
僕は感謝し、頭を下げて皆のもとに戻った。
「二人とも、待たせちゃってごめんね」
モモとナロ君が本屋さんの中で待っていた。
その後、子供達を連れて本屋から出てくる。
「いえ、待つのは得意ですから。少しの時間くらいどうってことないですよ」
「モモちゃんの言う通りです。子供達は本を読むのに夢中になっていていつもより待つのが楽でした」
「そうなんだ。それなら良かった」
「主様、文字が読めると本が面白かったです。いろんな物語があってどれもこれもキラキラしてました!」
マルは自分の眼もキラキラと輝かせ、本の楽しさを僕に伝えてきた。
「絵本も、文字の本もどっちも面白かった……。もっと読みたい……」
ミルも本が気に入ったのか、本屋さんを物欲しそうに見ている。
「……剣術が色々載ってる本、凄くためになった……」
パーズは何も持っていない状態で本に乗っていた絵柄の足運びをやっている。
「うぉー! 勇者カッコいいぜ! ハオ様も勇者になりたい!」
ハオは物語に出てくる勇者に感化されたのか、右手を高らかにあげて勝利の印を掲げていた。
「みんな、文字の勉強をしていてよかったね。もっといっぱい勉強すればいろんな本がいっぱい読めるようになるから、皆で勉強を頑張ろうね」
「ハーイ」×子供達。
僕達は三階での買い物を終え、四階に向って歩いて行く。
四階には様々な武器や防具、冒険のアイテムなんかが売っていた。今まで見かけなかった冒険者さん達も結構利用しており、物色している姿が眼に映る。
「さてと、モモの武器を探しに行こうか」
「はい。よろしくお願いします」
モモは頭を下げ、嬉しそうに耳を動かす。
僕は店員さんに相談し、子供達を中に入れてもいいかと交渉すると、暴れ回らないようにしてもらえれば構わないと言ってくれた。
「じゃあ、皆。他のお客さんの邪魔にならないよう、静かに移動するんだよ。興奮しても大声を出さないようにね」
「ハーイ」×子供達。
子供達は開いている手を高らかにあげ、返事をする。ちゃんと聞いてくれるだけ賢い子達だ。
もちろんその姿は他の人たちから異様な眼で見られている。だが、嫌悪感ではなく、可愛いなーと言うくらいの軽い視線だったのでそこまで痛くはない。逆に尊敬の念を送られる方が多かった。特に獣人さん達から……。
獣人さん達は鉄首輪がはめられているので子供達が奴隷と分かってしまうらしく、とても楽しそうにしている姿を見て涙する者までいた。やはり感情に熱い種族だと思い、素敵な種族だと僕は再確認する。
「じゃあ、モモは好きな武器を選んでいいよ。剣はまだ止めた方がいいかもしれないけど……」
僕は自分の左腕を摩る。
「あ、あの時はすみませんでした。反省しています」
「いや、気にしないで。モモの引かれる武器が剣なら、剣を買えばいいからさ」
「分かりました。少し見てきます」
僕はマルとミルを預かり、モモにお店の中にある武器を物色させる。
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