第270話 ミルの日記帳
「あるじ、お腹重い~」
エナはお腹を摩りながらのそのそと歩いている。
「食べ過ぎたんだから仕方ないでしょ。もぅ、エナ以外の皆も食べすぎだよ。特にモモ……。どれだけ食べたの?」
「ざっとお店の料理を半分は完食しました。とても美味しかったのでつい……」
「これ、元に戻るの?」
僕はモモの出ているお腹に触れる。
「ひゃっ……。ご、ご主人様……、くすぐったいです」
「ごめんごめん、でも、ほんとに出過ぎだよね……。逆に怖いくらいなんだけど」
「少しすれば消化されて元に戻りますよ。獣人の胃袋は強靭なので」
「そう……。なら、いいんだけど」
僕は気にしても仕方がないと思い、三階に向うための階段を探していた。
「あった、あそこから上に行けるみたいだよ」
僕達は階段を使い、二階に上がる。
二階には服が大量に並べられており、ミル、マル、モモの三人は眼を輝かせていた。
エナはそれほど興味なさそうな顔をしておきながら、チラチラとあたりを見渡し、服を見ている。
「皆、欲しい物はちゃんと吟味してからじゃないと選んではいけないよ。そうだ、先月の給料をあげておこうかな」
「え、ご主人様。先月はほぼ移動だったので給料なんて……」
「いいのいいの。せっかくお金を使えるお店に来たんだから、給料でほしい物を買うのは何も悪くないでしょ。じゃあ、皆に中金貨一枚……」
「多すぎです!」×モモ、ナロ君。
「そ、そう? じゃあ、金貨一枚……」
僕は皆に金貨一枚を手渡していった。
「これからいろんなところを回るけど、ほしい物があったらそのお金で買っていいからね。皆、お金の計算は勉強したから分かるでしょ。いいかい、そのお金で買えない物は買ってはいけません。どうしても欲しいのならお金を貯めてから。分かった?」
「ハーイ!」×子供達。
「じゃあ、まずは皆の欲しがっている物を買いに行こうか」
僕達はとりあえず二階をあとにして、三階に向う。
三階に到着すると、目の前に文具や本、玩具や器具など幅広くいろんな商品が並んでいた。
「じゃあ、ミルの欲しがっている日記帳とハオの欲しがっていたボール、ナロ君に必要な教科書や文房具を見に行こうか」
僕達は文房具屋さんには入り、色々物色した。
僕は日記帳が売っている場所を見つけ、ミルを呼ぶ。
「ミル、この中にあるやつだったら好きなのを選んでいいよ」
ミルはモモの手を放し、僕の方へ小走りでやってくる。
「うわぁ……。どれも凄いキラキラしてる……」
日記帳には全て紙で出来た安価な品から、表示は革、中は高級紙を使った最高級の品まで幅広く取りそろえられていた。
「どれにしよう……」
ミルは日記帳の種類が多すぎて迷っていた。
「触ってみたり、開いて中を見てみたりしてもいいよ。自分が一年間使う日記帳だからね。一番しっくりくる品にした方がいい」
「んー、どうしようかな……。主様はどれがいいと思う……?」
「僕だったら」
僕は最高級の日記帳を手に取り、パラパラとめくってみる。とても肌触りがよく開きやすい。だが、子供が文章を書きたくなるかと言われれば何とも言えない。あと、結構重たい。
ミルたちは獣人なのであまり重さは気にしなくてもいいかもしれないが、重いと感じると書く気がなくなる気がしてしまうので、候補から外した。
僕は表紙が革で出来ており、普通の紙で作られた日記帳を手に取る。
先ほどと同様手触りが良く、紙の開き具合もいい。加えて凄く軽かった。
「僕ならこれを選ぶかな」
「なら……、ミルもそれがいい……」
「自分で選ばなくていいの?」
「主様に選んでもらった物を使いたい……。その方が、嬉しい……」
「そうか。なら、これにしよう」
僕はミルの頭を撫で、ミルにモモのもとに戻らせる。
日記帳の値段は金貨一枚。
ミルへの送り物だけを買いに店員さんに話しかけようと思ったが、僕は最高級の日記帳も手に取っていた。
眼の端に『浸水・可燃耐性』の文字が映ったのだ。
どうやら高級な日記帳に防水防火が施されているらしく、値段に相応しい効果を持っていると知って、迷う。
ミルの日記帳が万が一にも濡れてしまったらどうしようとか、燃えたらどうしようと考えてしまい、考えがまとまらなかった。
「高級な日記帳は僕が使うか……。子供達の成長の記録でも残せるし。出費や日時の確認もできる。あって損はない。ミルと一緒に交換日記も出来るかもしれないし……。買うか」
僕は頭の中で必要なものだと判断し、日記帳を二冊買った。
ミルへの贈り物と、子供達の成長を記録するためのものだ。
ミルへの贈り物は店員さんに梱包してもらい、可愛らしくリボンを着けてもらった。紙袋にも入れてもらい、僕は受け取る。
その紙袋を持ってミルのもとに向かい、手渡した。
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