第269話 初めてのバイキング料理

「マルは卵料理が食べたいです!」


「ミルは……お魚が食べたい……」


「……パーズは食べれれば何でもいい……」


「ハオ様はもちろん肉だぜ!!」


「私は、ご主人様が好きな物を食べたいですね」


「僕は食べた覚えのない料理を食べたいです」


 皆の要望はバラバラだった。容貌をすべて満たしてくれるお店があるのだろうか。


 僕は悩みに悩んでお店を探していたら、一店舗だけ叶えてくれそうな場所があった。


「あ、あそこがいいかもしれない」


 僕はとあるお店に目を着ける。僕達はあるお店に向かい、列に並んだ。


 ここは、他のお店よりも人の列が少ない上に、皆の要望を全て答えられそうだ。


 このお店から出てくる人は主に大柄の男性で、とても満腹そうにしている。それ故にとても幸せそうだった。


 僕たちの前に並んでいる人達も皆太っており、やはりそれだけ料理が美味しいお店なのかもしれない。


 数分で列は進み出し、僕達もお店の中に入れるようになった。


「いらっしゃいませ~。スモーガスボードへようこそお越し下しました。何名様でしょうか?」


 お店の店員さんに声を掛けられる。


「えっと、八人です」


「八名様ですね。お席が四人用テーブルしかないのですぐにくっ付けて八人用テーブルに致しますので少々お待ちください」


「は、はい」


 女性の店員さんはチャカチャカと動き、僕のもとを去ったあとすぐに戻ってきた。


「お待たせしました。お席にご案内いたします」


 僕達は女性のあとをついていき、広めのテーブルに到着した。


「当店はお一人様、銀貨五枚で九○分間、好きな料理が食べ放題となっております。飲み物は自由にお取りください。あと、先にお支払いをして頂いても構いませんか?」


「全然大丈夫ですよ」


 僕は金貨四枚を女性に手渡した。


「ありがとうございます。木の板(ボート)は入口近くにあります。現在の時間が丁度正午ですので、午後一時三〇分までどうぞ好きなだけ食べて行ってください」


「ありがとうございます」


「それでは失礼します」


 店員さんは僕達のもとから離れていった。


「主~! ここ何なの! いっぱい色んな料理が置いてあるよ!」


 エナはとんでもなく興奮しており、テーブルに手を置いてソファー席の上で跳ねていた。


「ここはバイキング料理のお店だよ。お店に並んでいる品なら好きな料理を好きなだけ食べていいんだ。ま、全部食べきるのは他の人の迷惑になるからだめだけど、好きなだけ食べていいのは本当だよ。皆、僕の後ろに着いてきて」


「ハーイ!」×子供達。


 僕はボードを持って三枚ほど平たい木皿を置く。大量に並べられている料理の中から僕はサラダとパスタ、ピザ、ウィンナーなどを盛りつけていき、一つの定食を作った。


「こんなふうに、好きな料理を好きなように盛り付けていいんだ。食べ終わったら別の料理を食べてもいいよ」


 僕は子供達に盛り付けた定食を見せる。


「はわわわ……」


 エナは感動しているのか口が塞がらない。他の子供達も目をキラキラと輝かせていた。


「皆、他の人の迷惑にならない程度に楽しむんだよ」


「ハーイ!!」×子供達。


 子供たちの歓喜の声がお店に響く。


 僕は一足先にボードをテーブルに置いた。子供達が取れない料理を取ってあげるために僕は子供達のもとに戻る。


「主~! あれと、それと、これと、あ、これも! 全部山盛りで!」


「エナ、こんなに食べられるの?」


「もち!」


 僕の持っているボードに置いてある皿にはウィンナー、バーコン、ステーキ、ハンバーグと言った肉料理がこれでもかと盛られている。


 どれもこれも一人の子供が食べられるような量ではないのだが、食欲の凄いエナなら食べてしまえそうだ。


 ただ、これだけだとあまりにも体に悪いので、野菜も取ってもらおうと思ったのだが、エナには断固拒否された。仕方なく、野菜ジュースで我慢してもらう。


「主様。主様。マルにもいっぱいよそってください!」


「はいはい。分かったよ」


 僕は次々とくる子供達の注文を受け、料理をよそっていった。


 皆がテーブルに並んだ頃、手を合わせて食事を始めた。


 子供達は物凄い勢いで食べ進め、それぞれの食べたがっていた料理を無我夢中で貪る。


「お代わり!」×子供達。


「は、早ぁ……」


 僕が一皿食べ終わる前に子供達が全ての皿を食べ終わり、もっと食べたいから料理を早くよそってほしそうな顔で見てくる。


 僕は食べていたピザを皿に置き、子供達の食べたい料理をよそっていく。


 お店の人には申し訳ないが、この子達の食欲は普通ではないのだ。


 食べたい欲を放出している皆はお店の料理を次々に食べつくしていく。


 お店側の方からしたらただ事ではない。王都でなら即出禁にされそうな状況なのだが、このお店にいる人達も子供達に感化され、もの凄い食いっぷりを見せる。


 さらにさらに感化されていたのは料理を作っている料理人たちで、負けじと料理を作り続けていた。


 僕の方から調理場が見えるのだが、料理人たちはとんでもなく忙しそうにしているのに、笑顔で料理を作っている。それだけ食べてもらえるのがうれしいのかもしれない。


 子供達とお客の激しい争いは活気を生み、お店が盛り上がっていく。すると、バイキング料理に興味を持った店外にいたお客たちを店内に呼び込み、いつの間にかお店が満席になってしまった。


 その頃には九〇分が過ぎてしまい、僕たちの食事は終わった。


 僕が食べた料理はピザを一ピース。ただそれだけだ……。


「ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」


 お店が盛況したので店員さん達が皆子供達にお礼を言っていた。


 子供達はなぜお礼を言われているのか分からないようで、あたまに? を浮かべている。


「うっぷ。主、あのお店凄い。お腹いっぱいになった~」


「もう、食べ過ぎ……。お腹ポッコリどころじゃないよ……」


 僕以外の子達は妊娠しているんじゃないかと言うくらいお腹が膨れている。


 服が閉まらず、臍が飛び出していた。

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