第268話 四階建てのお店
僕とモモは馬車を走らせ、大きな雑貨屋を見つけた。
高さが二〇メートルはありそうな雑貨屋で、人の出入りが盛んなのを見ると人気のお店なのだろう。
「よし、モモ。ここのお店にしよう。皆の欲しいものが、だいたい見つかりそうだ」
「はい。分かりました」
僕達は雑貨屋が保有している土地に向かい、馬車を止めた。
他にも多くの馬車があり、人気なのがうかがえる。
「皆。降りていいよ」
「ハーイ!」×子供達
子供達は砂利の地面に飛び降りる。
「僕とエナ。モモとミル、マル。ナロ君とパーズ、ハオの三組で行動するようにね」
「はーい」×子供達
「街は広いから迷子になったら大変だから、皆はモモとナロ君の手を放さないように。分かった?」
「はーい!」×子供達
「じゃあ、モモとナロ君は子供達からできる限り眼を放さないでね」
「了解です」
「同じ過ちは繰り返さないよう努力します」
モモとナロ君は子供達と手を繋ぎ、離れないように注意する。
「それじゃあ行こうか。皆、はしゃぎ過ぎないようにね。特にエナとハオは僕達から離れないようにしてよ」
「ハーイ」×エナ、ハオ。
エナは僕の手を掴みながら右手を上げ、ハオはナロ君の手を掴みながら左手をあげる。
僕達は建物の入り口に向って歩いていた。
多くの人が道を行きかい活気のある雰囲気を醸し出している。
僕達を見ても何も不思議に思わないらしく、可愛い子達が歩いているくらいの感覚でしかない。
「ここ、凄く歩きやすいですね。ウルフィリアギルドまでの道を歩いた時とは全然違います。人の眼が怖くありません」
モモは歩きながら周りを見渡す。
「ま、誰も皆んなを不振に思ってないからだと思うよ。あと、皆が人に少し慣れてきた証拠なんじゃないかな」
モモは僕の方を向いた。
「モモは僕と生活して人も悪い人ばかりじゃないって思えるようになってきたのかもしれない。僕はそうだといいなって考えているんだけど」
「確かにそうかもしれません。ご主人様と一緒にいると、全ての人が悪い方じゃないんだって分かります」
「でも、でも。主様以上にいい人もいないと思います!」
「ミルもそう思う……」
マルは大きな声で僕を褒めてくれた。
加えて、ミルも同じように思ってくれているらしい。
「ありがとう二人とも。僕も出来るだけ善人でいたいって思うけど、時には道を踏み外すときもある。人ってそう言う生き物なんだよ。完璧な人はいない。神様ですら完璧じゃないんだ」
「なぜそう思うんですか?」
「だって、神様が完璧なら、この世界も完璧で溢れているでしょ。でも、完璧なものなんて一つもない」
「まぁ、確かに……」
「だから、完璧なんて現実的に不可能なんだよ。完璧に近しくなれるよう努力する。それが大切だと思う」
「なるほど……」
僕達は小話を挟みながら建物までの道を歩いていた。
道を行きかう人が多いのは仕事を中断して昼食をどこにしようかと迷っている方たちばかり。
紳士服を着ている男性が牛丼屋に駆け込む姿は村であまり見かけないので新鮮だ。
僕達は大きな建物の入り口にやってきた。
「ご主人様。ここに建物内の地図が描いてあります」
モモは建物の入り口付近に張り出されている地図を指さして教えてくれた。
「本当だ。地図を見ておかないと迷っちゃいそうだし、見ておこうか」
僕はモモの指差す建物の地図を見る。
「えっと……、四階建てになってるのか」
一階が食料品、飲食店。
二階が衣服。
三階が玩具や器具、本。
四階が武器や防具。
「へぇ、各階にいろんなお店が集まってるんだ。面白いな」
「主、主、早くいこ~。エナ待てない~」
エナは僕の手を掴んで飛び跳ねている。
目新しい物が大好きなエナは大変興奮しており、手を放したら建物内を駆けだしてしまいそうな程、元気だった。
「はいはい。じゃあ、僕達は三階と四階に行けばいいみたいだから、先に昼食をすませちゃおうか。お腹空いてる子は手を挙げてください」
「ハーイ」×子供達。
「皆お腹空いているということでいいね。それじゃあ、一階の飲食店を見て回ろうか」
僕達はお店の中を歩いていく。
「何か美味しそうな料理があったら入ってみよう。あ、金額は気にしなくていいからね」
僕達は多くの人が混雑している一階を歩く。
街中の人がここに集まっているのかと言うほど、繁盛しており、特に食品売り場は多くの人でにぎわっていた。
それだけ質が良くて安いのかもしれない。
ただ、飲食店の方もお昼時なだけあって多くの人が並び、大渋滞となっている。
「んー。どこのお店も多くの人が並んでるなぁ」
寿司屋さんは大人気、うどん屋さんも大人気。
「やっぱり勇者食はどれも人気だよなぁ。対外美味しいし。案外安い。と言うか、どこもかしこも勇者食しかないや……」
「主、主。エナ、肉食べたい! 肉なら何でもいい!」
「肉か……。それならかつ丼、焼き肉定食、とかいっぱいあるから難しいなぁ。他の皆は何が食べたい?」
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