第247話 目に見えない恐怖
「子供の方は気力しだいだな。解毒薬の効果が出ているから、未知の毒素ではなさそうだ。何者にやられたんだろうな……」
「分からないです。でも、反対の村にはギルドがあるはず……。冒険者もいるはずだ。なのに、村人が森の中に逃げるなんておかしい」
「それだけ多くの魔物か盗賊でも出たんだろうな。傷口からすると切れ味の悪そうな武器を使ってやがる。武器を使える者、毒を使える者、と考えて魔物の中だとゴブリン辺りだな」
薬屋のおじさんも僕と同じ原因を考えていた。
「反対の村にはウルフィリアギルドの支部があるのを盗賊が知らない訳がない。加えて、あの村に盗賊が入ったとしても得られる利益はほぼないと考えると、ゴブリンに襲われている可能性が高いな」
「またゴブリン……」
「そう言えば十年前にも反対の村はゴブリン達に襲われていたな。対抗策は取ってあったはずなのに、なぜ破られたんだ……」
「分かりません。でも、ウルフィリアギルドの支部の人たちが本部に連絡を取っているはずだから、すぐに冒険者が駆けつけるはずです。僕たちの村には被害が出ていないので干渉しすぎない方がいいかもしれません」
「そうかもな。だが、丁度村長が反対側の村にいるんじゃなかったか。数日前、村を少しだけ離れると聞いたんだが……」
「そう言えば、レイトも言っていたな……」
「今日はもうすぐ夕暮れだ。暗い中を移動するのは危険すぎる。ギルドの者に任せるべきだろう。その方が確実だ」
「そうですね。じゃあ、僕はこれで帰ります。料金はいくらですか?」
「そうだな。二人で金貨二枚ってところだ」
「なら、僕が払います」
「何でコルトが払うんだ? この二人が払うべきだろ。酷な話だがな」
「この親子は襲われたくて襲われたんじゃないはずです。お金まで取られたら可哀そうですよ。助けたついでに治療費を支払わせてください」
僕は懐から金貨を二枚取り出し、おじさんに渡した。
「はぁ、相変わらずお人よしだな。ま、確かに受け取った」
僕は薬屋を離れ、自宅に戻る。
一瞬、反対側の村に行こうとしたがふみとどまった。
この村に危害が及ばないとは限らない。
子供達を置いていくわけにはいかないと思ったのだ。
「ただいま」
「おかえり。って、主、血が出てる」
「これは僕の血じゃないよ。他の人の血。僕はもう一度お風呂に入らないといけないみたいだ。エナ達は夕食終わった?」
「ううん。主が帰ってくるのを待ってたの。だから、早く一緒に食べよう。お腹すぎて倒れちゃいそうなの」
「分かった。手を一度洗ってくるから皆で食べよう」
「うんっ!」
僕は水溜めの水を使って手を洗ってうがいもした。
縁側から家の中に入り、居間に向う。
子供達がまだかまだかと僕の合図を待っていた。
「遅れてごめんね。それじゃあ、いただきます」
「いただきます!」×子供達。
子供達は料理を食べ進めていく。
お腹が相当空いていたのか食卓に置かれていた料理はみるみる消えていった。
僕は反対側の村が少し心配で料理が喉を通らなかった。
また何かあったのかと思うと無性に放っておけない。
レイトのお父さんである、この村の村長もいるのだから動きたくなるのも無理はない。
だが、今は子供たちの安全を優先すべきだと考えた。
僕は料理を口に少しだけ運び、食べているように見せている。
食事を終えて僕だけお風呂に入った。
汚れた体を洗うのだ。
お風呂に入り終え、新し下着を着て寝間着に着替える。
すると、不安が少しだけ落ち着いた。
先ほどまで何かしないといけないと言う使命感に捕らわれていたが僕は子供達を守ると言う大切な使命がある。
僕の仕事を蔑ろにする訳にはいかない。
僕は部屋に向い布団に横たわる子供達を見て安心した。
僕の守るべき存在はここにちゃんといる。そう思えた。
僕は少しだけ仮眠をとり、村に脅威が迫って来た時に備える。
仮眠をとったので眠気に襲われず、供えられた。
結局その日の夜に、魔物が攻め込んでくると言った被害にはならなかった。
僕は頭に浮かぶ不安を掻き消すために剣を振る。
剣を振ると、それに集中できるので何も恐怖を感じずに済んでいた。
「はっ! ふっ! せいやっ!」
「はっ! ふっ! せいやっ!」
「……はっ! ふっ! せいやっ! ……」
僕が剣を振ると、エナとパーズが剣を振る。
今日は二人ともしっかりと起きてきたようだ。
今日の天気は雲り。
この後少し雨が降りそうな気候だった。
レイトのお父さんがいつ帰ってくるのか分からない。
レイト自身も何時帰ってくるか分からない。
レイトはつい先日村を出たばかりなので帰るのは遅くなると考えられる。
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