第245話 モモと入浴
エナは何とかトイレに間に合い、無駄な掃除をしなくて済む。
エナがことをすませトイレから出て来た。
「ふぅ~、間に合ったぁ」
僕達はお風呂場に戻り、エナの体を綺麗に洗う。
子供たちの体を洗い終わったあと、僕はもう一度お風呂に入って体を温めた。
子供達はナロ君に連れられて先にお風呂場から出ていった。
「ふぅ~。一人でゆっくりお風呂に入るのも悪くないな。子供達がいるとお風呂にゆっくりと入れないんだよな。でも、それだけ元気ってことだよね。僕もモモと変わらないといけないし、そろそろ出ようかな」
僕はお風呂から出ようとすると誰かが脱衣所から入ってきた。
「ん……、だれ?」
「えっと……。いっしょに入ってもいいですか……」
「モモ? 別にいいけど……」
モモは体の前を布で隠し、恥ずかしそうにしながらお湯につかっている僕のもとに歩いてくる。
ひたひたという足音が僕の方にどんどんと近づいてきた。
モモのふっくらとした太ももと胸の肌が布で絶妙に隠しきれておらず、湯気によって湿った肌が丸見えになっていた。
普通の男性が見たら可愛らしいと思うのだろうか、それとも淫らだと思うのだろうか。
僕が思うのはなぜ入ってきたのだろう? という疑問。
モモが入ってきたと言う状態と恥ずかしそうにしているモモがそこにいると言う事実だけが頭の中で巡っている。
「し、失礼します……」
モモは足先をお風呂のお湯につけ、入ってくる。
最終的に肩までつかり、甘い吐息を漏らしていた。
どうやら、モモにとって丁度いい温度だったらしい。
「病み上がりだけど、はいって大丈夫だったの?」
「はい、問題ありません。体は清潔にしておいた方が病気にもかかりにくいですし、温めた方が疲れも取れます」
「何で、僕が入っているのに、入ってきたの?」
「えっと……、一緒に入りたかったので……」
モモは視線を水面に向け、大きな耳をヘたらせていた。
「そう。なら別にいいんだ。モモが僕と入るのが嫌だと思ったから後から入るように言ったけど、一緒に入りたかったのならそう言えばよかったのに」
「その……、ご主人様と二人っきりで……、入りたかったので……」
「何で、僕と二人っきり?」
「うぅ……。べ、別にご主人様は何も考えなくて結構です。ただ、その場でお風呂を楽しんでいてください」
モモは頬を膨らませて顔をプイっと背ける。
「ん? 何で怒ってるの……」
僕にはモモの行動がよく分からない。
「怒ってません。ちょっと期待してた私がバカみたいだと思っただけです」
「ん? 何を期待していたのかは知らないけど、モモとお風呂に入れて僕は嬉しいよ。初めて会った時は殺されかけたからさ。その後も、結構嫌われてたし。でも、お風呂にいっしょに入れるくらい仲が深まってよかったよ」
「うぅ、最初の記憶は消してください……」
「無理かな。だって死ぬかと本当に思ったんだもん。この鉄首輪がなかったら僕の首は噛み千切られてたよ」
僕はモモの首元についている鉄首輪の鎖部分に触れる。
「は、恥ずかしいので、思い出さないでください……」
「別に恥ずかしがらなくてもいいのに。それだけ仲間思いなんだな、って思うだけだからさ。でも、奴隷時代はあんまりおもいだしたくないよね。ごめん、あやまるよ」
僕はモモに頭を少し下げて謝る。
「そんな、ご主人様はあやまらないでください。私は奴隷になったからご主人様に会えました。ご主人様に会うまでは辛いことばかりでしたけど、出会ってからは奴隷になってよかったって思えるようになって……。その、生きててよかったって、考えられるようになったんです。どれもこれも、ご主人様のおかげです」
モモは僕の手を握り、鉄首輪から離れさせる。お風呂のお湯で温まっていたからか、とても暖かい。
「はは……。そんなふうに思ってくれるのなら僕は嬉しいよ。モモが自分自身をもっと好きになってくれるように僕は頑張るからモモも、自分を責めるようなことはなるべく言わないようにしてね」
僕はモモの右頬に手を当てて、撫でる。
「は、はい……。分かりました。ご主人様」
モモは僕の手に自身の手を重ね、頬にぐっとくっ付けるように力を加えてくる。
少しの間、モモと一緒にお風呂に入り、僕はお風呂で立ち上がり出ようとした。
「はわわゎゎ……」
「ん……。どうしたの?」
「ご、ごめんなさい。ルリさん、私にはまだ無理ですぅ……」
なぜここでルリさんの名前が出て来たのか僕には分からなかったがモモは掌で眼を隠し、指の隙間をチラチラと開けて僕の体を見ていた。
「ご主人様の……大きいですね……」
「筋肉だよね?」
「も、もちろんです! そ、それ以外にないですよ!」
僕はお風呂からあがり、脱衣所に向った。
子供達の姿はなく脱衣所には僕しかいなかった。
体を乾いた布で拭き、水気を取る。
すぐに着替え終わり、脱衣所を出た。
「ふぅ~。さっぱりした。皆どこに行ったのかな。ナロ君がいるから大丈夫だと思うけど」
僕は玄関から外に出て、子供達を探す。
「皆~、どこにいるの? お~い」
子供達に声を掛けるが反応がない。
耳がいい子達が多いから僕の声が聞こえていない訳ではないはずだ。
僕は耳を澄ませ、子供達がどこにいるのかを探る。
庭の方で声が微かに聞こえた。僕は裏庭に向う。
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