第240話 モモの葛藤

「えっと、モモ。今さらだけど掃除をしてくれてありがとう。じゃあ、明日からは屋敷の掃除も復帰できるの?」


「はい。出来ます。というか、やらせてください。私も掃除をしたいんです」


「分かった。でも、一時間に一度は休むこと。いい?」


「は、はい! ありがとうございます!」


 モモは頭を下げ、感謝の意を表した。


 僕達はモモと一緒に居間に向い、夜食を得る。


 その後、皆は遊び疲れたのかお風呂に入ったあとすぐに寝てしまった。


 僕は子供達の表情を見ていると皆は凄く幸せそうにしていた。


 どうかこのまま仕事をして沢山遊んで、いっぱい食べて寝るという、そんな子供が子供らしい生活をおくり、すくすくと成長していってほしいと願うばかりである。


「うぅ……。うぅ……。重い……」


 僕は眠っている最中、体に何かがのしかかっていると感じた。


 そのせいで、夜中にも拘らず眼が覚めてしまう。


「ん……。みんな集まりすぎ……」


 僕が寝ている最中に同じ部屋で寝ている皆は僕の体にのしかかるように移動していた。


「一人ずつ起こさないように移動させないと」


 僕は子供達を静かに退かしていき、別の場所で寝かせる。


「寝相の良かったモモまで、なぜここで寝てるのかな……。まぁ、上に乗られていると重いからどいてもらわないと」


 モモは僕に重なるような体勢で寝ていた。


 その為、僕の眼の前には板挟みにあっている大きな双丘が見える。


 月明かりに照らされているとより一層神秘的に見えてしまい、綺麗だ……モモの顔が。


「さてと、モモにどいてもらわないといけないんだけど、抱き着かれてるから離れられないんだよな。起こすのは体調の悪いモモに申し訳ないし、今夜はこのままでいるか。さっきよりは軽くなったから、また眠れるでしょ」


 僕は眼を瞑る。


 次の日。


 僕は何か変わった悲鳴で目を覚ました。


「ふえっ!」


「ん……。何……」


 僕の上で寝ていたモモが目を覚ましたらしく、立ち上がって何が起こっていたのか分からないと言った表情をしていた。


「おはよう、モモ。よく眠れた?」


「お、おはようございます……。えっと、はい……、ずっと寝てたのにさらにぐっすりと眠れました」


「そう、良かったね」


「えっと、えっと、えっと……。私はいったい何がどうなってご主人様の上に……」


「さぁ? いつの間にか乗ってたよ」


「も、もしかして起きてたんですか?」


「子供達も皆乗って来ていたから重くて、起きちゃったんだ。見ようと思ってみたわけじゃないよ」


「で、でも……。子供達は周りにいるじゃないですか」


「僕が退かしたからね。モモは僕に抱き着き過ぎて放せられなかったんだ。ごめん」


「い、いや、ご主人様は何も悪くないです。というか、私が抱き着いてたんですか?」


「うん。僕の胸に顔を埋めてむぎゅーってね」


「はわぁはわぁ……」


 モモの口がもごもごと動き、顔が赤くなっていく。


 最近は感情が表に出やすい子なのだと分かったので、恥ずかしかったんだろうなとすぐに分かる。


 初めて会った時よりも感情が表に出てくれるのでありがたい。


 そう言う姿も可愛らしいなと思う一面であり、他の男にこんなことしたら危ないだろうなと思う危険な一面でもある。


「モモ、やたら滅多らいろんな人に抱き着いたら危ないからね。何されるのか分かったものじゃないから」


「しません、しません。というか、私も何でこんな事態になったのか分からないんですよ」


「あるじ~。まくらぁ。あるじのまくら~」


 エナは寝ぼけて僕を枕だと勘違いし、むぎゅっと抱き着いてきた。


「主様のにおい……、こっちからする……」


 続いてミルが僕にくっ付いた。


「主様、主様、むぎゅぅ~」


 マルまで僕にくっ付いてきた。


 その後、パーズやハオまで僕にくっ付いた来た。


「もしかして、私はご主人様の枕と勘違いして……」


「その可能性はあるかもね。僕の枕を渡していたから、枕と僕のにおいを分けにくくなっていたのかも。モモは僕の枕をどう使ってたの?」


「え、い、いえ……。別に普通に使っていましたよ。たまに抱き着いてましたけど……」


「そうなんだ。でも、僕は全然かまわないよ。抱き着きたいなら抱き着けばいい。子供達みたいにね」


「わ、私は子供じゃないので……」


 モモは下を向いて身を縮めていた。


「子供じゃなかったら抱き着いてはいけないなんて法律は無いよ。家族だし、何ら変じゃない」


「わ、私は……」


 モモは葛藤の末。


『ボフッ』


 僕の体に飛び乗ってきた。


「ご主人様~。ずっとこうしたかったんです。昨日から……いや、ずっと前からこんな風に抱き着きたかったんです。子供みたいでごめんなさい」


「別にいいよ。モモもこんな風に甘えたかったんなら、それでも構わないさ」


「ふぁ~。うぁ、コルトさん、なんかすごい状態ですね。モモちゃんまで……」

ナロ君が起き上がって僕のもとにやってきた。

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