第154話 タルピドゥ以外の魔物
僕達はグラスさんの心配をしながらタルピドゥの素材を集めていた。
モモの手際は物凄く早く、僕が1枚の皮を剥ぎ終わる前にモモは5枚の皮を剥いでいる。
僕達は長い時間、皮を剥ぎ続け、山のように積まれていたタルピドゥの皮を剥ぎ終わった。
「終わってしまった。もう、2時間以上経ってるよ。それなのに、まだ帰ってこないのはさすがに何かがあったんだ」
「敵意を常に感じているので、そこまで遠くにはいないはずです。出会えていない可能性は低いですから、何かあったに違いありません」
「僕達も森に入ってグラスさん達を探しに行こう。モモ、グラスさんのにおいは追える?」
「すみません、この雨のせいで消えています」
「やっぱりか……。それじゃあ、モモの感じている敵意の近くに行こう。そうすれば会えるかもしれない」
「分かりました。向かいましょう」
僕達は森の方に向う。
少し歩いた先に九頭竜川があり、もう少し先に行ったところで吊り橋が掛かっていた。
「あのつり橋から森の方に行けるみたいですね」
「そうだね。行こうか」
僕達はつり橋を渡り木々の生い茂る森に入っていく。
「ご主人様、こっちです」
僕は冒険バッグを背負ったモモの後ろに着いていく。
その間、モモの身に何かあればすぐ対応できるように動ける準備をしておく。
僕達は森の中を走っていると、地面に複数の足跡が残っていた。
「これは、冒険者さん達の足跡……。今までは無かったのにどうしていきなり現れたんだ」
「分かりません。地面が何かに均されていたとしか考えられませんね」
「均されてた……。とりあえず、先に進もう。ここから足跡が残っているなら、追っていけば見つかるはずだ」
「はい。急ぎましょう」
僕達は足の回転速度をさらに上げて走った。
少しして地面が揺れ始める。
『ドドドドドドドドド!!』
「うわっ! また地震か!」
僕は縦に波打つ大きな揺れを感じた。
「いえ、何かが動いているみたいです。私の感じている敵意もどんどん移動しています」
「こんな揺れを起こすほど大きな生き物がいるのか。グラスさんの所に速く向わないと取り返しのつかない事態になりそうだ」
僕達は地面の足跡を追ってグラスさん達を探す。
「ご主人様、あそこの木を見てください!」
「ん……。人か」
僕達は森の木に縛り上げられている冒険者さんを見つけた。
「うぐ……うぐぐ……」
「大丈夫ですか。今、助けますからね」
僕は『ポロトの剣』で冒険者さんを縛っていた木の根を切って助ける。
「いったい何があったんですか」
僕は冒険者さんを木に持たれかけされて質問する。
「魔物に襲われた。タルピドゥ……だけじゃなかったんだ」
「いったい、何の魔物に襲われたんですか」
「それは……」
冒険者さんが発言しようとした直後、モモが叫ぶ。
「ご主人様。いつの間にか囲まれています!」
「え! いったい何に囲まれているの」
「どうやら、トロントに囲まれているみたいです」
「トロントって木の魔物だよね」
「はい。いつもは木に擬態し、獲物が来た時に襲い掛かる魔物です。囲まれてしまうほど、いたなんて。魔物なのに敵意が感じ取りにくく、気づくのが遅れました」
「タルピドゥだけじゃなくて、トロントも大量発生していたんだ」
冒険者さんがかすれるような声で、伝えてくれた。
「トロント達も大量発生していた……。なるほど、だからタルピドゥがあんなに大きくなっていたのか。それなら合点がいくぞ」
「どうしてですか?」
モモは辺りを警戒しながら僕に近づく。
「タルピドゥは木の根を食べる習性がある。トロントは木の魔物だ。魔物が魔物を食べたらその分強く大きくなる。だからタルピドゥの個体が異様に大きかったんだ」
「なるほど……」
「大量発生していたのなら仕方がない。今から敵を倒す量が2倍になっただけだ。僕はトロント達を倒す。モモは冒険者さんをお願い」
「分かりました」
僕は『ポロトの剣』を構えて、不自然な動きをする木に目掛けて攻撃した。
「はぁあ!」
「グワワワワ!」
切りかかると木の幹に顔が浮かび上がり、悲鳴を上げた。
「やっぱりトロントだったか。それじゃあ、周りにある木は全て……」
「グワワワワワ!!」
木に擬態していたトロント達が一斉に動き始めた。
木の幹に大きな口が開き、木の枝や土に埋まっていた根が地面から這い出しながら蠢いている。
「なるほどな。ここにいた冒険者さんは、人をおびき寄せるための餌か……。僕達はまんまとトロントの罠にはまってしまったんだ」
「グワワワワワ!!」
トロント達は僕に向ってよく撓る木の枝を振りかざしてきた。
僕は全方位からの攻撃に一瞬たじろぐも、今の僕にはモモを守らなければならないという責任と冒険者さんを助けるという目的がある。
加えて、それを両方叶えてくれる最高の剣がある。
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