第153話 タルピドゥの解体
「さてと、モモは魔石とか素材を集めた経験はある?」
「はい、昔はよく狩りに出てましたから」
「そうなんだ。僕は倒してばかりで、素材の採取は経験が全くないから、モモに任せてもいいかな」
「はい、任せてください。えっと、このナイフは使ってもいいですか?」
モモは冒険バックからナイフを取り出して僕に見せてきた。
「うん、使っていいよ。硬い部分があれば僕に言って。剣で切り裂くから」
「了解です」
モモは冒険バックを持って天幕の下に走って行き、綺麗な服からボロボロの服に着替え直してきた。
きっと新しい服に血が飛び散らないようにするためだろう。
長めの髪も広がらないようにまとめ、後ろで結んだ。
「よし。それでは魔物の魔石から取っていきます。一番高く売れるので最優先で集めていきましょう」
「分かった」
モモは切り裂かれたタルピドゥの体から魔石だけを綺麗に採取していく。
個体ごとに魔石の位置が違うのに、よく見つけられるなと感心した。
「なんでそんなに早く魔石を見つけられるの?」
「えっとですね。魔物の肉は腐りやすいんですけど、魔石の周りは綺麗な場合が多いんですよ。なので、魔物の体で比較的腐っていない部分に魔石があると思っていいです」
「なるほど。魔石の周りは腐りにくいんだ」
僕はタルピドゥの体で新鮮な部分を見つけてナイフで少し切ると、魔石が転がり落ちた。
「あ、出てきた。こうやって魔石を取ればいいんだ」
「ご主人様は魔物を狩っていたと仰っていましたが、何で素材の採取はしなかったんですか?」
「倒した魔物は全部友達にあげてたよ。別にいらなかったから」
「え……売れるのにですか?」
「うん。野菜を育てて必要な分だけ魔物や動物の肉を取って食べてるだけでよかったし、お金が必要なのは新聞くらいだから、お金がほとんどいらなかったんだよ」
「そうなんですか……。逆に私は必死にお金を稼いでいました。来る日も来る日も森で魔物を狩ってお金に変えていました。ですけど、全然足らなくて……」
「何のためにお金を溜めてたの?」
「お爺ちゃんの病気を治すためです。最後には私が奴隷になってお金を作りました」
「そうなんだ……。そのお爺ちゃんは生きているの?」
「もう何年も前なので分かりません」
「そうか、いつか会えるといいね」
「はい」
僕とモモは大量に魔石を集めた。
ジャガイモほどの魔石が50個、リンゴほどの魔石が100個以上、大きなスイカほどの魔石が10個。
「こうして集めると、凄い数だね。まさかリンゴの大きさがこんなにあるなんて……。タルピドゥが3メートル以上にならないとリンゴの大きさにはならないぞ。3メートルあれば大きめのタルピドゥが100頭以上も現れただなんて、異常としか言いようがないな」
「私、こんなに大きな魔石はじめて見ました……。抱えないと持てません」
モモはスイカほどある大きな魔石を運んでいる。
「それは3メートル以上ある個体の中にあった魔石だね。でも確かに僕もこんなに大きな魔石を見た覚えがないな。ここまで大きくなるにはそれなりに時間が掛かるはずなんだ。それこそ親玉でもおかしくないはず。それが10頭もいたなんて……。これはもう成長速度が上がっているとしか考えられないな。そのせいで魔物が大量に繁殖して、人里におりてきている。これも魔王が復活して世界の魔力が影響を受けているのが原因かもしれない」
「魔王ですか?」
「うん。復活したとしか聞いてないけど、Sランク冒険者が魔王の単語を口にしていたんだ」
「魔王は凄く強いんですよね。でも毎回倒してるのに、また復活したんですか?」
「魔王は悪い魔力の塊みたいな存在らしいからいくらでも復活するんだよ。復活するたびに歴代の勇者が倒してきたって言われている。僕の尊敬するアイクさんもその1人なんだ」
「なるほど……。勇者さんが早く現れてくれないと世界が危険なんですね」
「そ、そうだね……。早く現れてくれないかな……。僕達の平和な生活が脅かされちゃうよ」
――どうしよう。勇者の役割を放棄してスキルを売っちゃったとか言えない。お願いだからお金持ちで教養のある誰かが勇者のスキルを買って魔王を倒してくれ。僕には世界を守るなんて役割重すぎて、できない。人任せになっちゃうけど、それでうまくいくなら僕は一向に構わない。
「ご主人様。こんなに大きな魔石、何に使うんですか」
「船とか列車とかの動力源に使われるんじゃないかな。大きければその分大きな魔力を秘めてるからね」
「船、列車……」
どうやら、モモは知らないらしい。
「まぁ、馬車みたいに僕達を運んでくれる乗り物だよ。またいつか見れる日が来ると思うから」
「分かりました。楽しみにしてます」
モモは微笑みながら、未来に楽しみを残した。
「それではご主人様、次は皮と鱗の採取をしましょう。魔石よりも量が多いので大変ですけど、これだけ固い鱗なら高く売れるんじゃないですか」
「どうだろう、相場が分からないな。グラスさん達が帰って来たら聞いてみようか」
「そうですね。でも、遅くないですか帰ってくるの。グラスさん達が森に向ってから結構な時間が経っていると思うんですが」
「そうだね。かれこれ30分以上は経ってるかな。でも爆発音は聞こえないし、戦いが始まっている様子がないんだよな。まだ探しているのかも。モモはまだ敵意を感じる?」
「はい。森の方から大きな大きな敵意が今もむけられています」
「グラスさん達は任せておけって言ってたけど、ちょっと心配だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます