第91話 エピローグ
「主~、終わった~」
「…は! …ああ、終わった。それなら行こうか」
僕は意識を飛ばし過ぎて、その場で直立していた。
僕はハルンさんとルリさんをギルドに残して、他の7人と馬車を探す。
――ハルンさんとルリさん…頑張ってくださいね…。僕には2人を応援する立場にしかなれません…。それと…この子達を守る剣と盾にしかなりません…。
「主~、見て~お馬さんいる~」
「あ、ホントだ。それじゃあ、皆でアイスでも食べに行ってから、村行きの馬車へ乗り換えよう」
「はい!」「はい…」「…了解…」「おう!!」「は~い~!」「了解です」「了解しました」
僕達は、馬車に乗り昨日のアイスクリーム屋さんに足を運ぶ。
「あら~、今日も来てくれたの。嬉しいわ~。またこの子達の笑顔が見れるなんて」
「はは…。えっと、もう簡単には来れないので最後に味わっておこうと思いまして…」
「あら…そうなの。残念だわ…。それじゃあ、今日は特別に3段アイスを作ってあげるわね。値段は一段アイスの値段でいいから」
「本当ですか。ありがとうございます。また王都に訪れた時は絶対によりますね。この子達も一緒に」
「ホント。楽しみだわ~、この子達がどんな風に成長するのか。叔母ちゃん、長生きしないといけないわね~」
「叔母ちゃん! エナ、ミルク~と、チョコ、バナナで~。おねしゃす!」
「エナ、お願いしますでしょ」
「いいのいいの、可愛いじゃない。分かったわ、エナちゃん、ちょっと待っててね~」
「私は! ミルク、イチゴ、バナナ!」
「えっとミルは…ミルク、バニラ、ミルクシャーベット…」
「…ラムネ、ラムネ、ラムネ…」
「ハオ様の色っぽいやつ! これ(オレンジ)と! これ(甘夏)と! これ(みかん)!」
「えっと…僕は、バニラとチョコとイチゴで」
「私は…桃、白桃、黄桃で…」
――皆、何ですぐ決められるのかな…。あれか…匂いで味が分かるのか…。美味しい食べ物は良い匂いがするから、この身の匂いをかぎ分けてるんだろう。
僕はギルドカードで支払いを終えた。
皆3段重なり合ったアイスが載っているコーンを持っている。
休憩スペースで、みんな笑顔になりながらデザート感覚で食べ終わった。
皆のアイスはどんな味がするのか、一口ずつ貰っていったのだが…モモのアイスを食べる時だけ、凄く頬を赤らめるから、なぜか僕はモモの顔を見れなかった。
「さてと、送ってくれた馬車を待たせてるから早く乗り込もう」
子供たちはお腹いっぱいで眠そうだ。
このまま、ベンチに居続けたらきっとみんな眠ってしまう。
その前に何とかして、子供達に馬車に乗ってもらい車中で眠ってほしかった。
今の時間はちょうど午後3時半を過ぎたところだ。
馬車の御者さんには、僕の村へ送ってもらえないかと頼んだ。
好条件で了承をもらい、7日間以上の長い帰り道を揺られる。
中金貨5枚という値段は大分高い。
しかし、僕が村から王都に向かう際、乗り継いだ回数や馬車の大きさなどを考えると、王都から一本で僕の実家がある村まで行ってくれるというので、決して高すぎるわけではない。
僕とナロ君は7日間の食事を確保するため、干し肉を市場に売られている分あるだけ買い集めた。
ただ、馬車と一緒に借りた小さめの荷台を殆ど干し肉で埋め尽くしてしまい、他の物は買えなかった。
「これだけあれば…、さすがに足りるよね。干し肉だから噛む回数も増えるだろうし…。まぁ、足りなくなったら途中の村で買い足せばいいか」
僕たちは馬車へ戻り、ようやく王都を出る。
僕の人生の中で一番濃い、3日間だった。
間違いなく断言できる。
そう、この3日間で僕は人生の方針を決めた、数多くの家族が出来た、応援したい人達が増えた、お酒を飲んだ、家族じゃない女性と初めて一緒に寝た、心惹かれる剣に出会った、きっと村に帰ってから話のネタが尽きるのは相当、日が経ってからになってからだろう。
成人したばかりの僕が多くの家族と過ごす日々を送るようになるなんて…。
村人の誰が予想できるだろうか。
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