第88話 食べ方で性格は分かる
「あの…主様…。これ…」
「え…ミル、どうしたの? まだオムライスも、ハンバーグ、エビフライも丁度半分残ってるじゃないか。お腹痛かった? もしかして病気…」
「ええっと…違くて…。主様…ご飯ないから…あげようと思って…」
「いやいや、ミルもお腹空いてるんでしょ。僕を気にしなくていいよ。ミルがお腹いっぱいになればそれで僕は満足だから」
「でも…主様…お腹空いてる…、ミルそれは…悲しい…」
「ミルは優しいんだね…。それじゃあ、ハンバーグを…」
僕がハンバーグに箸を伸ばすとミルはとても悲しそうな顔をした…。
「いや…やっぱりエビフライを…」
ミルはまたもや悲しそうな顔をした…。
「いやいや…やっぱりオムライスを…」
またまた、ミルは悲しそうな顔をした…。
――いったい何を食べたらいいんだ…。あ…もしかして…。
「ミル、ニンジン…嫌いなの?」
僕がそう言うとミルの尻尾はまっすぐ上にビクッと伸びた。
「ち…違うよ…好きだから…、最後に残してあるの…」
ミルは目線を逸らし、斜め上45度方向を見る…。
「で…でも、主様が…どうしても食べたいって言うなら…あげてもいいです…」
「はは…そう、それじゃあお言葉に甘えていっぱい残ってるニンジンを貰おうかな」
僕は大量に残っていたニンジンを一欠片だけ残して平らげた。
「主様…。一個…残ってる…」
「ミルの大好きなニンジンを全部食べちゃうのは申し訳ないと思ってね。ちゃんと一個残しておいてあげたから。残さず食べるんだよ」
「うぅぅ…はい…」
ミルは恐る恐るニンジンにフォークを突き立てると、手を震わせながら小さな口に運ぶ…。
しかし、開けた口は中々閉じずニンジンを食べるのをためらっていた。
少ししてやっと決心したのか、開いた口を閉じてニンジンを噛み締めた。
元々白い肌はドンドン青ざめていく…。
何度か咀嚼した後、一気に飲み込んだ。
「うぅぅ…おいじくない…」
ミルは涙目になりながらもちゃんと食べきった。
「よく食べれたね、ミル。偉いじゃないか。たった一欠片でも食べきったのは凄いぞ!」
僕は頑張ったミルを髪の毛がくしゃくしゃになるまでいっぱい撫でた。
青ざめていた顔は褐色が良くなり、笑顔になって行く。
「えへへ…、ミル…食べれた…」
ミルは嬉しそうに、尻尾を振っている。
――まぁ、僕はニンジンしか食べられなかったけど、何も食べないよりはましだな…。
「皆は、食べ終わったかな…」
僕は皆の食事風景を見る。まだ食べ終わっている者はいなかった。
「でもこうしてみると…、食べ方も色々あるんだな…」
マルは美味しそうに、何でもパクパク食べる…。
ミルはゆっくりよく噛んで食べる…。
パーズは礼儀正しく、食べる…。
ハオは周りを汚しながらガツガツ食べる…。
エナは止まらずハグハグ食べる…。
「うん…何となく性格が合わられてるな…。食べ方で性格が分かるの、結構便利だ」
――それじゃあ、残りの4人は…。
ハルンさんは大きな口で一気に食材をかき込みながら食べる…。
ルリさんは素早いテンポでいろいろ摘まみながら食べる…。
ナロ君は、特に変わった特徴は無く普通に食べる。
モモは1つ1つ味わいながら、噛み締めて食べる。
「うん…性格が表れてると思うな…。さてと…そろそろ皆も食べ終わるだろうし、出発の準備をしないと」
皆昼食を食べ終わり、それぞれの皿を返しに行く。
「ごちそうさまでした。美味しかったです…」
――ニンジンしか食べてないけど…。
「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしてます」
「はい、また来ます」
僕達は、ウルフィリアギルドを出る。
再度道を歩き、門を出た…。
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