第79話 3カ月の生活費
「何か…。凄い、積極的な人ですね…、初めはもっと違う印象だったんですけど…」
「そうだね…、まぁ、積極的な人は嫌いじゃないけど。すぎるのも流石に面倒だなって思っちゃうな…。でもやる気になってくれたみたいでよかったよ」
僕達は、受付まで到着しギルドカードの作成は可能か聞いてみる。
前回とはまた違うお姉さんに話しかけた。
「あの、すみません。奴隷でもギルドカードは作れますか?」
「えっと…、冒険者登録はされていますか?」
「はい、一応パーティーメンバーとして冒険者登録は済んでいると思います」
「そうですか。ではパーティー名とお二方のお名前をお願いします」
「パーティー名は『ポロトの剣』名前は、ハルン・ガルルとルリ・ラートンと言います」
「分かりました、調べますので少々お待ちください」
受付のお姉さんはスキルボードに色々と打ち込み始める。
1~2分で調べ終わり、僕達の方を向いた。
「お待たせいたしました。確かにお二方の登録は確認できましたので、カードを作成できます」
「本当ですか。良かった…。それなら、2人のギルドカードと、パーティー名義のギルドカードを発行してもらってもいいですか?」
「はい、分かりました。今からお二方のギルドカードと『ポロトの剣』名義で作成いたしますね」
お姉さんはスキルボードを持ち上げて、ギルドの奥へ歩いて行った。
「いや~、良かった…。ギルドカードを作れたよ。カードが有ると無いでは大分違うからね。少しでも持ち物が減らせるのは凄く便利だよ」
「えっと…コルトさん、どうして自分たちのカードだけじゃなく、パーティー名義のカードも作ったんですか?」
「ああ、それはね。2人の稼いだお金はパーティー名義のカードへ入れて、生活費は2人のギルドカードへ入れる。そうすれば、いくら稼いだかすぐわかるでしょ。いちいち、報酬を現金で受け取らなくても、勝手にギルドカードへ入るようにしておけば、その分受付に並ぶ時間も短縮できるからね」
「なるほど…それも、そうですね…」
2人と話している間に、お姉さんは戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらがお二方のギルドカードでこちらがパーティー名義のギルドカードになります」
3枚のギルドカードは僕のカードと全く一緒の絵柄だ。エンブレムである剣、弓、盾、双剣、槍、杖、が重なる背景にウルフィリアギルドの象徴である鋭くとがった牙が描かれている。いつ見てもカッコいい…。
「ありがとうございます。えっと、早速お金を入れたいんですけどいいですか…」
「はい、いいですよ。では、コルトさんのギルドカードをこちらのスキルボードへ翳して、移したい名義のカードへ金額を打ち込んでください。この工程は他の者に見えないよう魔法が掛けられていますので、安心してくださいね」
「分かりました…」
――さてと…。いくら入れようか…。とりあえず、一ヶ月の生活費にいくらかかるのかな…。ちょっと計算してみよう。安い宿に泊まるとして…、一泊銀貨3枚、3ヶ月で約90日だから銀貨270枚。小金貨換算で27枚、中金貨で約3枚。食費に一日中金貨1枚だとして、中金貨90枚、大金貨9枚か…食費だけでも大分かかるな…。えっと、つまり1人白金貨1枚あれば3ヶ月余裕で暮らせるわけだ。それならまずは白金貨を一枚ずつ…。次に、アイテムだけど…これはいくらあっても足りないよね。まぁ、一月白金貨1枚計算で3枚でとりあえず様子を見よう。足りなければ、また入れればいいだけだし。
僕は、2人のギルドカードに白金貨1枚ずつ、パーティー名義のギルドカードに白金貨3枚を僕のギルドカードから移した。
「出来ました」
「はい、それではそれぞれのギルドカードをスキルボードへ翳してください」
『ガオウ!』
「はい。これで、お金の移行は完了いたしました。他に何か御用は有りますでしょうか?」
「いえ、今日はこれだけなので、大丈夫です。ありがとうございました」
「はい、それではお気をつけて」
僕達は受付から離れた。
「えっと…コルトさん、いくらカードにいれたんですか…」
「ん? 二人が三カ月間無理なく暮らせる金額を入れました。気にせずに使ってくださいね。もし足りなくなったら、村に来てもらえば僕がもう一度同じように入金しますから。あ、でもギャンブルなんかに使ったらダメですよ。あと、だまし売りとか無駄な物には一切使ったらダメですからね。僕との約束です」
「はい、勿論です!」
「その逆で、冒険中に武器が壊れたりとかしてお金が掛かったらしっかりと使うようにしてください。もし、冒険者活動が出来なくなったらすぐ僕の村に帰ってきてもいいですから。またほかの作戦を考えましょう」
「分かりました! 精一杯頑張らせてもらいます」
ハルンさんとルリさんはやる気満々のようだ。
「それじゃあ、僕たちは今日にも村へ出発しようと思います。2人は残ってこれから3ヶ月ほど冒険者を頑張ってください」
「はい!」×2
「それじゃあ…村の方向に向かう馬車を探そうか」
僕達がウルフィリアギルドを出ようとした時だった…。
「おい…ふざけるな。何だこの依頼料は! こっちはSランク冒険者なんだぞ」
「ん…」
ギルドの奥から聞こえてきたのは、身を震えさせるほど冷徹な声…。
その場の空気は一気に凍りつく。
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