第78話 ウルフィリアギルド前で解散…

「あ、いた! ロミア~ 大丈夫だった~」


ララさんとウルさん、フォーリアさんはウルフィリアギルドの前で待っていた。


「ララ…ごめんね、心配かけて…」


「まぁ…私達も悪かったよ。ロミアを一人で行動させたのがいけなかった。ロミアは方向音痴だって忘れてたよ」


「いや…、私もここまでだとは思ってなかったからさ。確かに道には迷うけど、いつもはちゃんとたどり着けてるしさ。なんか今回のは少し違ったんだよ…」


「少し違ったって? いったい何が違ったって言うの…」


「何かに呼ばれたの『勇者を呼んで来い』って。自分でも何言ってるのかよく分からないんだけどね…」


「自分でもよく分からないって…危ない病気じゃないでしょうね…」


「病気じゃないと思うけど…、一回病院行く?」


「ロミアさんは道草をしないようにすれば、容易に目的地へたどり着けると思いますよ…」


僕は大量の荷物を地面に置きながら呟いた…。


「あれ、コルトさん…。どうしたんですかその荷物…」


「これ全部ロミアさんから皆さんへのプレゼントらしいです…、心配かけたお詫びも混ざっているらしいですけど…」


「アハハ…そうなんですよ…」


僕はロミアさんから預けられていたすべての荷物をブレーメンの皆さんへ渡した。


「ありがとう…。結構買ったのね…。あのロミアが色々買うなんて…珍しい…」


「まぁね、それだけ皆に対して悪いと思ってるんだよ…。えっと…コルトさん達もごめんなさい…。こんなドジを踏んでしまった私を探すために貴重な時間を割いてくれて…」


「まぁ…。確かに時間はもったいなかったですけど…、無事でほんとによかったですよ。何が起こるか本当に分からないですからね。特に夜中なんて、女性に取ったらとても危ない間帯なんですから。これからは気おつけてくださいよ」


「は…はい…。申し訳ありませんでした…」


「反省してくれるならいいですけど…。あと、あまりお酒を飲むのは控えた方がよさそうですね…、特にフォーリアさんわ」


「ちょ…ちょっとだけは?」


「ダメです。本当に大切な記念日だけにしておいた方がいいです。誕生日くらいがちょうどいいんじゃないですか」


「う…うう…」


「それにもうお酒を飲む理由も無いでしょ。僕に負けたんですから、もう張り合う必要はありません。これからは冒険者の仕事を精一杯頑張って、有名な冒険者パーティーになってください。その為に王都へ来たんですよね?」


「は…はい…分かりました…。えっと…それで…返事は…?」


「へ… 返事…。いったい何の返事ですか?」


「いえ…いいんです…覚えていないのなら、また改めて…」


(え…なに…、何かあったの…)

(いやね…、アンタを探している時に、昨日起きた事態をフォーリアに話したの…)

(え…、話しちゃったの…。あんなの恥ずかしくて思い出したく無いでしょ…)

(それがね…、フォーリア…ガチ恋しちゃってるのよ…)

(マジなの…。それ…、じゃあ昨日言ったのは酔った勢いの本心だったと分け…)

(そう…、でも…明らかにコルトさんは鈍感気質だから…)

(そうだよね…。だって昨日の言葉でも通じなかったんだから…。でもコルト君は優良物件過ぎると思うよ…フォーリアじゃ一生手に入らない様な優良物件だよ…。今日一緒に歩いてきたけど、色々と凄かった…)

(何が…? 普通に歩いてただけでしょ…)

(まず子供に好かれすぎてる…)

(はいはい…それは分かる。子供いっぱい抱えてるからね…)

(同年代に好かれすぎている…)

(はぁ…。まぁ…確かに)

(中高年にも好かれていた…)

(へ…?)

(老人たちにも好かれていた…)

(な…、何それ…)

(老若男女…すべてに好印象を与えていたんだよ…。凄すぎない…、もしかしたらそう言うスキルを持っているのかも…)

(確かに…、モテモテになるスキルくらいしか説明のしようがないけど…そんなスキル知らないし…)

(ねえ…このままコルト君とフォーリアをくっ付けさせて、フォーリアの面倒を見て貰うのはどう?)

(すっごく有難いけど…そんなのは無理でしょ…、だって見てよほら…。ちびっ子たちがえげつない視線を浴びせてるよ…。まぁ…優しそうだから押し込めばいけそうだけども…。まず私達は自分でお金を稼がないと。やっとやりたい冒険者の仕事が出来るんだから)

(お…ララにしては、やる気だね…。確かに…私たち…今貰い物のお金でいい思いしてただけだもんね。こんな私達に投資してくれた人に恩返ししないと!)


「ちょっと、3人とも何してるの。さっさと冒険者の依頼を見に行くぞ! 回復のポーションとMPのポーションを買って、罠抜けの紐も買う。さっさと冒険者らしい冒険者にならなきゃいけなくなった」


「ちょ、フォーリア1人で突っ走らないで…」


「あはは…、それじゃあコルトさん。この辺で解散といきましょうか…」


「そうですね、冒険者の仕事頑張ってください」


「はい、ありがとうございました。また、お礼させてもらいます」


ロミアさんは深く頭を下げて、フォーリアさん達を追いかけて行った。


「主~、ちっこい人に~ なんて言ったの~?」


――エナの言うちっこい人とはフォーリアさんだ。エナから…ちっこい呼ばわりされるなんて、相当舐められすぎでは…。まぁ多分見た目からそう言っているだけだろうけど…。


「へ? 別にたいした質問じゃないよ。『どんな人がタイプですか!』と聞かれたから僕は『ひたむきに頑張る人は好感がもてる』と答えただけだよ。タイプと言われても…よく分からないから…」


僕は特に変な言葉を発していないはずだ。なぜフォーリアさんがあんな質問をしてきたのか…全く分からない…。


「それじゃあ、ハルンさんとルリさん、今から2人のギルドカードを作りに行きましょう。その中に、3ヶ月分の生活費と冒険を行う際に必要なアイテムを買うためのお金を僕のギルドカードから移します」


「え…えっと、私達でもカードを作れるんですか…。一応奴隷ですけど…」


「一度聞いてみないと分からないですけど、ダメならそのままお金を渡します。多分大丈夫だと思いますよ。僕たちは『ポロトの剣』というパーティーなので、その名義でカードを作れば、少なくとも一枚は作れるはずです」


「そうですか…、それなら急いで作りましょう。グズグズしている間に、時間は過ぎていってしまいます!」


「そうですね。それじゃあ、受付に行きましょうか」


僕達は、冒険者さん達が行きかう中を縫うように進んで行き、受付まで歩いてきた。


途中、ブレーメンの4人とすれ違った。どうやらさっそく冒険者の依頼をこなしに行くらしい。


フォーリアさんは僕に『名前をちゃんと覚えておいてくださいね!』と猛烈に念押しされた。


昨日の状況を覚えている限り、どう考えても忘れられる訳が無い。


残りの3名はにやにやこちらを見てくるだけなので、『分かりました…』とだけ言っておいた。

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