第75話 行方不明のロミアさん

「なになに…どうしたの?」


一度退出してもらっていたフォーリアさんは僕達の会話を聞きつけ部屋に入って来た。


「ロミアがまだ戻って来てないのよ…。昨日『会計を済ませて、すぐ追いつく』と言ったっきり…。いったいどこに行ったのかしら…」


「あのロミアなら…普通に迷ったんじゃない? 方向音痴だし…」


「いや…流石にそれは無いでしょ…。ここの宿からギャング食堂まで200メートルくらいしかないじゃない。外灯とネオンライトも光ってたし、前にも泊まったから覚えてるでしょ」


「いやいや…ロミアの方向音痴を舐めたらいけない。ほんとにたどり着けない時は全くたどり着けないんだから。早く見つけてあげないと、永遠にさまよい続けるよ…。どこ~どこ~って」


フォーリアさんはアンデッドの様な動きをしてさまよう。


「そうね…夜も開けたから見つけやすくなってるでしょ。さっさと見つけて、冒険の準備をしないと、せっかく冒険者の依頼をできるようになったんだから」


「そうだな…、ロミアを早く見つけて朝ご飯代を払ってもらわないと…」


――フォーリアさん…、昨日あれだけ飲んだのに朝から食欲旺盛なんだ…。こりゃ…お金が無くなるわけだよ…。


「ん? あ…そうじゃん…ギルドカードを持ってるの…ロミアじゃん…。どうしよう、このままだと私達、宿から出られない…」


「一円も持ってないんですか…」


「私達がお金を持つと、すぐ使っちゃうんですよ…。私はコスメや服…、ウルはよく分からない宗教グッズ…、フォーリアは食べ物…。だからほとんど無欲のロミアに全部お金を預けてるんです。それもあって…私達はお金を持てないんですよ…」


ララさんは一気に褐色の悪くなった頬に手を当て、どうしようか悩んでいる。


「はぁ…。ここは僕が払いますよ。宿の半分は僕たちが使ってましたから。昨日の食事をおごってもらったお礼です」


「ほ…ほんとですか…。コルトさん…お金持ってたんですね。えっと今の所はお願いします…後で立て替えますから」


「いえいえ、大丈夫ですよ…。それよりも早くロミアさんを探しに行かないと。もしかしたら事件に巻き込まれているかもしれません」


「そうですね…急ぎましょう…」


コルト達は宿をあとにする。


大人数で固まって探すよりも手分けしてロミアを探した方がいいという話になり、分担して探す作戦に出た。


「宿から4組に分かれましょう、探す範囲を広げた方が見つけやすいですから。それと危険な地区にだけは立ち入らないようにしてください」


ブレーメンの3人、ハルンさんとルリさんの2人、ナロ君とモモの2人、子供達と僕の4組に分かれてロミアさんを探した。


「ん~。ロミアさんはどこにいるのかな…。エナ…ロミアさんの匂いは分かる?」


「スンスン…。ん~…分からない~。色々混ざってる。でもあの臭さなら…近づけば分かる」


「そうか…、ならまだ近くには居ないのか…、皆も何か見つけたら言ってね」


「はい!」「…はい」「……」「おう!!」「は~い~!」


子供達と一緒にロミアさんの姿を探すがどこにも見当たらない…。


僕達は今、ウルフィリアギルド前にまで来ている。


「これだけ人が居ると…流石に分かりにくいな…」


「主様! 微かに臭いを感じます!」

「エナも感じた~!」


マルとエナはミリアさんの臭いに反応した。


マルはグイグイと僕のズボンを引っ張る。


「ほんと! どっちの方向から臭うの?」


「あっちです!」


マルは、ウルフィリアギルドの方を指さした。

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