第74話 寝起きの悪い目覚め

翌朝…僕は激痛で目を覚ます。


『バシッ!!』


僕の顔面を誰かが平手打ちしてきたのだ…。


「痛っつ…。な…何だ…!」


僕は勢いよく上半身を起こす。


「へ…変態! ま…まさかコルトさんがこんな人だったなんて! 信じてたのに!」


僕の隣にいたのはローブを着て頬を赤く染めているフォーリアさんだった。


フォーリアさんの小さな掌は少し赤くなっており、僕の頬を叩いたと優に想像できる。


「は? いったい…どういう…」


「私だけに飽き足らず! 年端もいかない子供たちも食べちゃうなんて! 確かにコルトさんの奴隷さんですけど! さすがに酷すぎます!」


「え…ちょっと、何言ってるんですか、フォーリアさん」


「それより! 私は…コルトさんと…やったんですか…」


「え…なにを?」


「ど…どうせ! 酔っている私を好き勝手に…やったんでしょ…」


「訳が分かない…。いったいフォーリアさんは何を怒ってるんですか…?」


「だから…その…、えっと…うぅ…」


フォーリアさんは頬を真っ赤に染めて膨らませている。


どうやら言葉が出てこないらしい。


僕は発言を待つ間に、周りを見渡す。


エナ、マル、ミルは尻尾を振りながら気持ちよさそうに眠っている。全裸で…。


「というか…エナとマルそれにミルまで…。どうして寝間着を脱ぎ捨ててるんだ…。ちゃんと服を着ないと風邪ひいちゃうだろ…。もう…全く…」


僕は周りに脱ぎ捨てられている寝間着を3人へ再度着させる。


フォーリアさんはずっと黙ったままだったので僕の方から話しかける。


「はぁ…。それで…フォーリアさんの酔いは冷めたんですか…?」


「え…まぁ…。一晩寝れば…回復しますけど…」


「そうですか…やっと僕は解放されるんですね…。フォーリアさん、もうあんまり飲み過ぎてはいけませんよ。昨日みたくべろべろになっても知らないですからね。悪い男に捕まっても助けてあげられないんですから」


「え…。それじゃあ…昨日はコルトさんが…私を…悪い男から守ってくれたの」


「いえ…、そんなカッコいい行動はしてませんけど」


「それじゃあ! やっぱりコルトさんが私を宿に連れ込んだんじゃないですか!」


「いや…なんでそうなるの…。フォーリアさんが僕を全然離してくれなかったからこうなってるんですよ」


「え…。私…なにしてたの……」


「フォーリアさんは…酔っぱらいすぎてコアラみたく僕の腕にずっと抱き着いてたんです…」


フォーリアさんは僕と話していく間に幾度となく表情を変えた。


怒り、悲しみ、恥じらい…、表情が変わると思わず笑みが込み上げてくる。


「う…嘘…。私がそんな子供っぽい行動するわけない…記憶がないからって、いい加減な話をでっちあげて…」


「ないよ…。フォーリアは昨日ゲロを吐いて、コルトさんに解放されてたの。あんたはさっさとコルトさんにお礼を言わないとダメでしょ」


フォーリアさんの大声を聞きつけたララさんが救済に来てくれた…。


「そ…そんな馬鹿な…。それじゃあ…私はコルトさんにずっと子供っぽい姿をさらしていたと…」


「ええ…そうね…。おまけに趣味の悪い下着も、裸体だってもう見られてるんじゃない。どうせ全裸で起きたんでしょ」


「な…なぜそれを…」


「だって…あんた大抵全裸で寝てるでしょうが…。癖で寝てる間に全部脱いじゃうんだもん。子供のころから全く変わってない…」


「ななな…。そんな馬鹿な…私はなぜいつも起きたら全裸になってるかと思ったら…自分で脱いでいたのか…、知らなかった…」


「バカね…。相当なバカね…」


「え…えっと…コルトさんは…。私のえっと…」


「あ~大丈夫です。何も見てませんよ」


――全裸で抱き着かれていた事実は隠しておこう…。


僕達は洗濯し終わった服を受け取り、すぐに着替えた。


「ありがとうございます。結構汚れていたのに…綺麗さっぱり消えていますね」


「まぁ殆どアルコールだったし、水でごしごしと擦れば何とかね…。私結構家事得意だからさ~」


ララさんは露出多めで派手な格好をしている。なのに…家事が得意だとは…。意外だ…。


「そう言えば…ロミアさんはどこにいるんですか?」


「それが…昨日から帰って来てないんですよ…。受付の人に聞いても…私達の後から誰も客は来なかったって…」


「そうなんですか…。でも…それってちょっとヤバいんじゃないですか…」


「やばいですよね…、昨日から帰って来て無いって…どこで道草食ってるんだか…。酔って道で寝てるのかもしれないですね」


「でも…最後話したとき、あんまり酔ってるそぶりは見せてませんでしたよ…」


「そうですよね…。ロミアはすぐ酔っぱらってすぐ酔いがさめるタイプなので…、最後にあった時にはもう酔いはさめてたでしょうね…」


「そうなると…何かほかに原因がありそうですね…」

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