第67話 依頼報告
僕達は今、光源平野から歩いてギルドまで戻っているところだ。
「コルトさんって、色々と物知りなんですね。前から冒険者の依頼をやってたんですか?」
ロミアさんは、僕に質問してきた。
「いや、僕は全くの初心者ですよ。冒険者に少し興味があっただけです」
「そうなんですか…。凄く強そうだったので…、もう冒険者をやられているのかと思いました。今からでも初めてみたらいいんじゃないですか? せっかく強そうな奴隷さんをお持ちなんですから」
「いやいや…僕は見ているだけで十分です。人に注目されるのは苦手なんですよ。僕は田舎で細々と暮らしていた方が身の丈に合ってるんです」
「そうなんですか…それじゃあ、今日は怪我をさせてしまったお詫びとして、一杯奢らせてください。いや、一杯とは言わず何杯でも。飲んでください、私達…こう見えても結構お金持ちになったんです」
「はぁ…はぁ…」
――えっと…それは一応僕のお金なんだけど…。まぁ楽しんでくれるならいいか。
「臭い人~! 肉食える~?」
「こら、エナ…、臭いなんて言ったらダメだろ」
「え~、でも主~。この人臭いよ~、主の匂いを嗅いでないと耐えられないくらい臭い~」
「そんなに…なのか? …だから、みんな僕の方に顔を近づけているんだね…」
「私…、今そんなに臭いんですか…。最悪です…」
ロミアさんはしゅんとしてしまい、僕から離れる。
「まぁ、冒険者は一応汚れ仕事ですから。臭くなるのは仕方ないんじゃないですかね。僕は全然感じませんけど。逆に綺麗な黒髪から石鹸の匂いがして綺麗好きな人なんだなと思いましたし」
「な、…そうですか。まぁ…アイテムの所為なので仕方ないですね…」
ウルフィリアギルドに到着し、スライムの魔石と依頼書を提出する。
「はい、こちら。今回の報酬銀貨5枚とプラスの報酬として金貨1枚です。スライムの魔石数から考え、依頼の3倍相当の行動をして頂いたと判断した結果ですのでお受け取り下さい」
「ありがとう、ございます…」
ハルンさんは、受付の人から金貨と銀貨を受け取った。
「は…初めて稼いだ金額をそのままもらえました…」
「よかったですね。これで目標の1000分の一をクリアしました。この調子でドンドン頑張ってください。生活費は僕が出します、無理せずできる依頼を着々とこなしていけば、1年以内には目標を達成できますよ」
「は、はい!」「頑張ります!」
「それじゃあ、皆で打ち上げに行こ~!」
ララさんはその大きな胸を弾ませ、元気よく腕を持ち上げた。
「夕食…どこに行きましょうか…」
僕は王都の飲食店をあまり知らない。ブレーメンの皆さんに丸投げする形で話を吹きかける。
「あ、私達の行きつけがあるんですけど。そこでもいいですか? お酒も美味しくて食べ物もおいしいお店があるんです。すぐ近くに宿もあるし」
「そうなんですか。いいですね。僕まだ成人してから一度もお酒を飲んだ経験なかったんですよ」
「え、そうなんですか…、それなら。皆で美味しく飲みましょう。子供たちは麦ジュースでそれっぽく」
「そうですね。皆にも人に慣れて貰いたいですし。いずれは独り立ちしてほしいですから」
「へぇ~、独り立ちですか…。でも…コルトさんから離れたがる子は…いるのでしょうか…」
ロミアさんは僕に抱き着く子供たちを見て、苦笑いを浮かべる。
「まぁ…今はこんな風ですけど…、いずれ時が経てば離れていくものですよ」
おばちゃんの教え、子供は時が経てばしだいに離れていく。それまでにどれだけの思い出を作れるのかが大切。親は子が離れていく姿を優しく見守らなければならない。子の将来を考えるなら、正しい道を選べるようになる力よりも険しい道を乗り越えられる力を与えなければならない。その力になる最も強い要因が思い出なのだという。
「そうですかね…」
ロミアさん達が案内してくれたのはウルフィリアギルドから徒歩で行けるほど近い飲食店だった。
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