第42話 10人家族

「ん? …え、何ですか? その物欲しそうな眼は? あ~もしかして、2人も撫でてほしいんですか?」


ハルンさんとルリさんも僕の方へと近づいてくる。


「え? あ、いや…べ、別に…嫌なら大丈夫なんですけど…」


「そ、そうですよ。私たち大人ですから…」


「何言ってるんですか~、僕は気にしません! ジャンジャン撫でてあげます! おりゃおりゃおりゃ!」


「く…! …これは…中々…やばいですね…。はぅう」


「ほ…ホントに…すごぅはぅ…うはぅ…ぁぁ」


――な…なんか撫でてると変な気分になるな…。何でなろう…。


僕は撫でに撫でまくり、2人がヘロヘロになるまで撫で切った。


「ふ~さてと、そこの2人はどうする? あ、そもそもまだ自己紹介してなかったよね。僕の名前はコルト・マグノリアス、よろしくね。確か2人には名前があるんだよね。教えてくれると嬉しいんだけど…」


部屋端に犬耳獣人の青年と狼耳獣人の乙女さんが立っていた。


「あ、はい! 僕の名前はナロ・サミンスと言います。犬系の獣人です! これからよろしくお願いします!」


ナロ君は僕に深々と頭を下げた。


――凄く礼儀正しいな…。腕までピシッとしてるし…、そこまで硬くならなくてもいいんだけどなぁ。


「う…うん。これからよろしくね。それじゃあ…次は…」


「はい…私の名前はモモ・ラティコード…です。狼系の獣人です。よろしくお願いします…。それと、さっきは済みませんでした…。あんなに威嚇してしまって…」


「いや…仕方ないよ。だって僕でもそうすると思うし。モモちゃん? モモ? モモさん? 何て読んだらいいかな?」


「えっと…モモ…でお願いします。ご主事様…」


――ご主人様って言うのはちょっと…違うと思うんだよな…。別に僕は皆の主人になった覚えは無いし…。エナのいうあるじも何かしっくりこないし…。


「ご主人様って…モモは昔どこかで働いてたの?」


「は…はい…、1年だけ貴族のお屋敷で…」


「そうなんだ、まぁ僕はご主人様ではないけど、モモの好きな風に呼んでくれて構わないから。その呼び方が呼びやすいんだったらそれでも良いや。あ…、皆にも同じことを言っておくね。僕は君たちのご主人様に成ったつもりは無い、だからどんな呼び方でも僕は許す。例え呼び捨てでも名字でも好きな風に呼んでくれて構わないから。家族だからね!」


「主~! エナも家族?」


「ああ、エナも僕の家族だ! これからどんな事が有っても僕たちは家族だよ! だから絶対に君たちを裏切ったりしない。約束する。どんな事があっても僕は君たちの家族だから」


「う…うう…コルトさん…」


「コルトさん…あなたは人間ですか…うう…」

「何で泣いてるんだよ2人とも? 僕はれっきとした人間だよ。ほら耳だって人間の耳形だし尻尾も付いてない。ほら、れっきとした人間でしょ。でも僕たちは家族。血のつながりが無くても、まだ皆のこと全然知らないけど…。それでも僕たちは家族になった。友情や愛情はこれから育んで行けばいいよ。僕の住んでる田舎でね!」


「ねえ! マルも家族!」

「ミルも…」

「…僕も…」

「ハオ様も!!家族にしてやってもいいぜ」「エナはずっと主の家族~!」


「ははは、皆…そう思ってくれると嬉しな」


僕は子供たちを5人まとめて抱きしめる。


――爺ちゃんと婆ちゃんにお土産は買ってないけど…孫を見せられそうだ。ちょっと…早すぎるかな。それにしても子供ってあったかいんだな…。


「良し! それじゃあ皆、歯を磨いてさっさと寝よう。明日も大変な1日になるからね」


「はい!」

「はい」

「は~い!」

「はい…」

「…はい…」

「はい!!」

「はいはいはい~!」

「は、はい!」

「は…はい」


「みんないい返事だね。よろしい」

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